日本口腔腫瘍学会誌
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シンポジウム3「口腔がん検診〜マネージメントとアセスメント〜」
次世代型口腔がん検診システムの構築にむけて
野村 武史
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2017 年 29 巻 3 号 p. 120-127

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抄録
口腔がんの死亡率の改善には,完全治癒が期待できる早期病変をできるだけ効率よく発見し,適切なタイミングで治療を行うことが重要である。東京歯科大学は1992年より千葉県を中心に口腔がんの対策型検診(集団検診)を実施し,成果を報告してきた。その後,2013年までの21年間で延べ13,265名の受診者に対し検診を行った。その結果,口腔がんが11名(0.14%)に発見された。これは5大がん検診の発見率と比べ遜色ないデータである。また,千葉市歯科医師会では2006年より任意型の検診(個別検診)を開始し,2016年までの10年間で全受診者数3,374名中,口腔がんを6名(0.18%)発見した。千葉市歯科医師会との合同事業における集団検診と個別検診を比較したところ,個別検診では要精密患者における口腔がん患者の割合が有意に高く,口腔がんを効率よく発見するためには,細胞診を併用した個別検診が有効である可能性が示唆された。今後は,低侵襲な口腔がん早期発見のための新たなスクリーニング法の開発やITネットワークを利用した新しい検診システムの構築が急務と考えられた。口腔がん検診を行う目的は,国民の健康に寄与できる可能性が高いことにある。市町村におけるネットワークを通じた病診連携の構築,新たなスクリーニング法の開発は,地域完結型医療の実現にも合致する。従って今後このような取り組みは,地域包括ケアの一環として,行政や企業,あるいは学会などを通して全国的に展開すべきであると考えられた。
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© 2017 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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