抄録
高齢化社会が進むにつれ,高齢者の口腔扁平上皮癌を治療する機会が増加することが予期される。本研究の目的は根治手術を施行した75歳以上の口腔扁平上皮癌患者の臨床的特徴を検討することである。2005年から2015年に当科を受診し,根治手術を施行した75歳以上の口腔扁平上皮癌患者187例(男性86例,女性101例)が対象である。原発部位は歯肉が81例(43.3%)と最も多く,続いて舌で67例(35.8%)であった。Stage分類では,stageⅠ:61例(32.6%),stageⅡ:61例(32.6%),stageⅢ:28例(15.0%),stageⅣA:37例(19.8%)であった。166例(88.8%)に基礎疾患を認めた。遊離組織移植を53例(28.3%)に施行し,前腕皮弁が24例と最も多く,続いて腹直筋皮弁が21例であった。皮弁全壊死は腹直筋皮弁の1例に認めた。5年全生存率は77.5%,5年疾患特異的生存率は89.1%であった。本研究において,根治手術により良好な結果を得た。術後の合併症や後遺症が少ないと考えられるならば,高齢者に対しても根治手術を行うべきと考えた。