日本口腔腫瘍学会誌
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29 巻, 4 号
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第35回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会
シンポジウム2「高齢者口腔癌治療の実際と今後の方向性」
  • 原田 浩之, 山下 徹郎
    2017 年 29 巻 4 号 p. 157
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
  • 平井 秀明, 横川 美咲, 及川 悠, 大迫 利光, 望月 裕美, 田中 香衣, 富岡 寛文, 島本 裕彰, 原田 浩之
    2017 年 29 巻 4 号 p. 158-164
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    高齢化社会が進むにつれ,高齢者の口腔扁平上皮癌を治療する機会が増加することが予期される。本研究の目的は根治手術を施行した75歳以上の口腔扁平上皮癌患者の臨床的特徴を検討することである。2005年から2015年に当科を受診し,根治手術を施行した75歳以上の口腔扁平上皮癌患者187例(男性86例,女性101例)が対象である。原発部位は歯肉が81例(43.3%)と最も多く,続いて舌で67例(35.8%)であった。Stage分類では,stageⅠ:61例(32.6%),stageⅡ:61例(32.6%),stageⅢ:28例(15.0%),stageⅣA:37例(19.8%)であった。166例(88.8%)に基礎疾患を認めた。遊離組織移植を53例(28.3%)に施行し,前腕皮弁が24例と最も多く,続いて腹直筋皮弁が21例であった。皮弁全壊死は腹直筋皮弁の1例に認めた。5年全生存率は77.5%,5年疾患特異的生存率は89.1%であった。本研究において,根治手術により良好な結果を得た。術後の合併症や後遺症が少ないと考えられるならば,高齢者に対しても根治手術を行うべきと考えた。
  • 髙後 友之, 山下 徹郎
    2017 年 29 巻 4 号 p. 165-171
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    日本が超高齢社会となり,後期高齢者の増加に伴い口腔癌患者罹患数も増加傾向にある。当科でも後期高齢口腔癌患者に対する治療機会も増えている。治療の際には,社会的要因,腫瘍の状態,身体的要因,精神的要因,患者や家族の意向なども考慮して,患者ごとに適した治療方針を判断していく必要がある。本研究では,当科における後期高齢患者の治療実態とその動向について考察し,今後の高齢口腔癌治療の方向性についても考えていく。
  • 光藤 健司, 林 雄一郎, 藤内 祝
    2017 年 29 巻 4 号 p. 172-176
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    高齢者は高血圧症,糖尿病あるいは肝臓・腎臓,呼吸器系障害などの併存疾患を有することがある。高齢者口腔癌患者に対する手術,化学療法,化学放射線療法などの治療法は多くの専門によるチームによって,原発部位,腫瘍の進展範囲,患者の年齢,併存疾患の有無,治療に対する患者の希望などから決められる。高齢者口腔癌患者に対する手術は生存率の向上に寄与するが,局所進行口腔癌に対する拡大手術は嚥下,発語障害を引き起こし,QOLに影響を及ぼすことがある。高齢者口腔癌患者に対する根治療法として放射線療法,化学放射線療法が選択されることもあるが,若年者と比較すると治療中の有害事象が多い傾向にある。
    本総説では高齢者口腔癌患者に対する逆行性超選択的動注化学療法と放射線療法との連日同時併用療法の有用性について述べる。
  • 佐藤 健吾
    2017 年 29 巻 4 号 p. 177-181
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    75歳以上の高齢者口腔がん患者へのCyberKnife(CK)治療の効果を検討した。対象症例は放射線治療としてはCK治療のみで,CK治療後1年以上の経過観察がなされた26例(男性10例 女性16例,年齢75~98歳(中央値:84歳))である。病理診断は全例扁平上皮癌であった。腫瘍容積は3.5~223.3ml(中央値:47.4ml)辺縁線量21.0~35.0Gyを3~7分割で治療していた。経過観察期間5~57か月(中央値:23か月)であった。無増悪生存期間の中央値は12か月,全生存率の中央値は24か月であった。新規の唾液腺への有害事象はなかった。
    CK治療は合併症の多い高齢者口腔癌に対しての手術療法を補完する有効な治療方法と考えられた。
  • 岡野 晋
    2017 年 29 巻 4 号 p. 182-188
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    本邦における高齢頭頸部がん患者は増加傾向にあり,治療適応の判断は各医療者の裁量に委ねられているが非常に難しい。暦年齢による区分の可否,老年症候群,特有の身体的特徴など種々の問題があるものの,明確な判断基準がないまま,年齢,PS,医療者の経験などに基づいてその判断が行われてきた。近年,新たな判断材料の一つとして,薬物療法適応の治療前評価を目的としたいくつかのツールの開発が進んでいる。薬物療法の有用性は,過去に多くの検証試験を通じて証明されてきたが,各試験の対象患者に占める高齢者の割合は小さく,また,年齢の上限が設けられている試験も多いことから,高齢者に対する生存への効果は明確でない。代表的な各試験のサブ解析を確認しても,有効性を示唆するデータは存在しない。しかし,患者の治療目標は必ずしも生存の延長ではなく,症状緩和,QOL維持なども生存と同様に大切な事項である。個々の症例の治療目標を明確にし,対象患者の薬物療法の適応を見極めた上で治療を行うことができれば,十分に有用なものとなりうる。
    高齢者を対象とした新たな臨床研究も数多く行われており,肺癌,大腸癌,乳がんなどのメジャーな悪性腫瘍を中心に次々と臨床試験が立ち上げられている。頭頸部癌についての検討は未だ少ないものの,海外ではその取り組みも始まっており,われわれが向き合うべき課題の一つである。がん薬物療法を受ける全高齢者の世界的な問題であり,他の癌種を含めた開発の動向を注視すべきである。
  • ―口腔癌治療を健康余命の面から考える―
    栗田 浩
    2017 年 29 巻 4 号 p. 189-195
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    高齢者の口腔癌患者が増加している。これらの患者では,身体的,生物学的,生理的,精神的および社会的に問題を抱えており,口腔癌治療医はその治療に苦慮している。
    われわれはこれまでに,後期高齢口腔癌患者の健康余命・自立期間(生命予後および病的状態を考慮に入れた総合的健康指標)について検討を行った。その結果,早期癌ではほとんどの患者が根治的な治療を受けており,その健康余命および生存期間は良好であった。また,進行癌患者では,75~79歳で標準治療が行われた患者では健康余命が良好であった。これらの結果から,後期高齢口腔癌患者の治療を考える際に,健康余命が重要な指標となる可能性や高齢者の機能評価の必要性が示された。また,いわゆる“Vulnerable”な高齢患者や根本的治療を望まない患者に対する治療法の開発が必要である。
シンポジウム4「口腔がん手術の適応を考える」
  • 上田 倫弘, 太田 嘉英
    2017 年 29 巻 4 号 p. 197
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
  • 長谷川 巧実, 南川 勉, 古森 孝英
    2017 年 29 巻 4 号 p. 198-205
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    根治手術を行った口腔扁平上皮癌のうち病理組織学的に被膜外浸潤陽性(Extranodal Extension(ENE))であった患者116例を対象とし,その術後治療別の予後と,術後CCRT群の有害事象について後ろ向きに検討した。術後CCRT群において,放射線照射60Gy以上,CDDP総投与量200mg/㎡以上を完遂した症例は39例(84.8%)であった。3年累積局所頸部制御率は,外科処置単独群で35.4%,術後RT群で53.6%,術後CCRT群で68.9%であった。また,3年累積生存率は,外科処置単独群で25.1%,術後RT群で59.2%,術後CCRT群で43.8%であった。また,ENE+およびpN1であった34例では,3年累積局所頸部制御率は,外科処置単独群で53.3%,術後RT群で72.9%,術後CCRT群で71.0%であった。また,3年累積生存率は,外科処置単独群で55.6%,術後RT群で75.0%,術後CCRT群で70.3%であった。本研究結果から進行口腔癌の術後再発高リスク症例に対する高用量CDDPの術後RTへの上乗せ効果は局所頸部に限定的である可能性が考えられた。また,頸部リンパ節の転移様相をふまえ,その頸部郭清術の適応,術式選択,術後補助療法について考察した。
  • 道 泰之, 原田 浩之
    2017 年 29 巻 4 号 p. 206-211
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    顎口腔領域に発生した扁平上皮癌以外の悪性腫瘍について,臨床的検討を行った。2006年から2015年までに加療した扁平上皮癌以外の悪性腫瘍は唾液腺癌81例,骨肉腫4例,軟部肉腫4例,粘膜原発悪性黒色腫4例の計93例であった。同期間に加療した悪性腫瘍患者は1,753例であり,5.3%(悪性リンパ腫68例を除く)を占めた。唾液腺癌については組織学的悪性度を考慮した安全域の設定が重要で,切除断端陽性であった16例の疾患特異的10年累積生存率は69.1%と低下していた。骨軟部肉腫については,術前・後に化学療法を行い,広範切除を行うことで原病死は1例にとどまり,良好な結果を得ていた。粘膜原発悪性黒色腫については,広範切除と適切な範囲の頸部郭清および,術後補助化学療法を行った結果,原病死はなく,担癌生存を1例に認めた。今後,免疫療法の普及により,さらなる生存期間の延長が期待される。これら93例の疾患特異的5年累積生存率は93.7%,10年で81.4%であった。特殊な組織型の腫瘍は,適切な切除範囲の設定と補助療法を用いることで,良好な治療成績を得ることが可能であると考えられた。
  • 上田 順宏, 今井 裕一郎, 山川 延宏, 上山 善弘, 中山 洋平, 有川 翔, 仲川 雅人, 松末 友美子, 山本 一彦, 桐田 忠昭
    2017 年 29 巻 4 号 p. 212-217
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    口腔癌において外科的切除を選択する際には,患者の年齢および健康余命,全身状態,治療への耐性,患者自身の外科的切除の受け入れ状態や経済的状態など,様々な患者背景に対する配慮が必要である。一般的に,高齢というだけで術後合併症のリスクが高くなるわけではないが,併存疾患の進行や全身状態の悪化は,広範な外科処置による術後合併症のリスクを増加させる要因となる。
    今回われわれは,口腔癌術後に生じる合併症に関わる因子を検討した。対象は,2011年から2015年までの期間に当科にて口腔癌の根治手術を施行した196例で,このうち原発巣切除のみの83例を除外し,頸部郭清術を施行した113例とした。手術後30日以内に生じた合併症について,それぞれの因子との関連をFisherの正確確立検定およびlogistic回帰分析にて検討した。合併症の多くが手術部位感染であり,術前のASA-PS(≧3)およびNLR(≧3.00)がリスク評価の指標となる可能性が示唆された。今後,口腔癌術後の合併症を軽減するための周術期管理法を探索する必要があると考えられた。
症例報告
  • 柚鳥 宏和, 松本 耕祐, 岩谷 博篤, 石田 優, 松尾 健司, 橘 進彰, 古森 孝英
    2017 年 29 巻 4 号 p. 219-225
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    急性呼吸促迫症候群(ARDS)は重篤な呼吸不全で死亡率は高い疾患である。われわれは,術後の口腔癌患者で発生したARDSの症例を報告する。症例は,76歳の男性,頰粘膜癌の根治手術を受けるために入院した。患者は根治手術後に腓骨皮弁の壊死をきたし,これが原因で術後感染を起こし,ARDSを発症した。胸部X線画像では両肺の肺胞浸潤が見られた。P/F比でも気管カニューレから8l/分の酸素流量で,99.1mmHgに低下した。人工呼吸管理,創部の外科的デブリードマンと薬物療法にて加療した。肺の酸素化は,P/F比は203mmHgに改善し,10日後に呼吸器から離脱した。
  • 早坂 純一, 林 宏栄, 佐瀬 美和子, 野口 忠秀, 伊藤 弘人, 神部 芳則, 草間 幹夫, 森 良之
    2017 年 29 巻 4 号 p. 227-232
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    急性上腸間膜動脈閉塞症は,発症初期に臨床症状が乏しいため早期診断が難しく,また急速で広範囲に腸管虚血や壊死を来す極めて予後不良な疾患である。今回われわれは,口底癌術後に上腸間膜動脈閉塞症を発症した1例を経験したので報告する。患者は73歳の女性で,心房細動の既往がありワルファリンカリウムによる抗血栓療法を受けていた。口底部に難治性潰瘍を生じ,近医歯科を受診したところ当科紹介受診となった。精査の結果,口底扁平上皮癌の診断となり,ヘパリンブリッジで抗血栓療法を行いながら口底部分切除術を施行した。術後2日目に腹痛を生じ,消化器科に対診し経過を観察したが症状はさらに増悪した。腹痛出現3時間後,腹痛の精査目的にCTを施行したところ上腸管膜動脈の閉塞が認められた。ついで画像下治療(以下,IVR)が行われ,血栓吸引およびウロキナーゼ投与による血栓溶解による治療が施行された。治療3時間後には腹痛は消退し,血流は再開した。しかしウロキナーゼ投与中は,口腔の手術創からの持続的な出血を生じ気道閉塞のリスクがあった。
    急性腹症を起こしている心疾患を有する高齢者は,本症のハイリスク患者であることを認識することが重要である。また早期診断には腹部造影CTとIVRおよびD-dimerによるモニタリングが有用であると考えられた。ウロキナーゼ投与時は,口腔の手術創からの持続的な出血や血腫形成に伴う気道トラブルに留意することが肝要である。
  • 北村 直也, 溝渕 隆宏, 大野 清二, 吉澤 泰昌, 山本 哲也
    2017 年 29 巻 4 号 p. 233-239
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    形質芽細胞リンパ腫(Plasmablastic lymphoma, 以下PBL)はHIV陽性者の口腔内に発生する予後不良の非Hodgkinリンパ腫として知られている。今回われわれは,上顎歯肉に発症したエイズ関連PBLの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。患者は61歳の男性で,上顎左側第二大臼歯周囲歯肉の腫脹を主訴に紹介となった。生検標本の病理組織学的および免疫組織化学的検索により病変はPBLと診断された。血液検査の結果,HIV抗原および抗体が陽性で,HIV-1定量PCRおよびCD4陽性細胞数がそれぞれ51,000 copies/mlおよび105 cells/μl であると判明した。 血液腫瘍内科医によるAntiretroviral therapyが開始後,上顎歯肉の腫瘤はPBLに対する化学療法は行うことなく急速に消退した。現在,Antiretroviral therapy開始後2年が経過しているが,HIV感染に対するコントロールは良好で,PBLの再燃も認められていない。
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