抄録
多形紅斑(erythema multiforme)は,医薬品や感染症により生じた免疫・アレルギー反応により発症する皮膚疾患で,粘膜疹を伴わず比較的軽症なタイプ(EM minor)と,粘膜疹を伴うタイプ(EM major)に分けられる。今回われわれは,口底癌術後再発ハイリスク症例に対する化学放射線療法(chemoradiotherapy:CRT)中に多形紅斑重症型(EM major)を発症した1例を経験した。CRTやセツキシマブ(cetuximab)併用放射線療法(bioradiotherapy:BRT)など既治療による粘膜および皮膚症状がある症例では,多形紅斑重症型(EM major)とStevens-Johnson症候群(SJS)の鑑別がより困難となる。CRTやBRT中の患者において,急激な皮疹の拡大や全身症状・粘膜症状を伴う重症薬疹を認めた場合には,速やかに皮膚科専門医にコンサルトし共同で治療することが重要である。