2019 年 31 巻 2 号 p. 85-90
本報告では,下顎神経領域の神経痛様疼痛を契機に発見され,下顎骨離断を併用した頸部アプローチにより摘出した副咽頭間隙腫瘍の1例を報告する。患者は42歳の女性で右側側頭部から下顎部の神経痛様疼痛を主訴に紹介来院した。CTおよびMRI検査で,右側副咽頭間隙で頭蓋底に及ぶ39×38×31mm大の腫瘍が発見された。経鼻挿管全身麻酔下に,下顎側方骨切り術を併用した頸部アプローチにより腫瘍の摘出を行った。腫瘍は明瞭な被膜で被われており,下歯槽神経との交通を認めた。病理組織診断は神経鞘腫であった。術後の経過は良好であったが,下顎神経領域の知覚麻痺を後遺した。術後5年経過し,再発等の所見は認めていない。