2019 年 31 巻 2 号 p. 97-103
頭頸部悪性腫瘍において遠隔転移は最も予後に影響する因子である。今回,われわれは肝門部リンパ節転移と腹膜播種性転移に至った,まれな下顎歯肉癌症例を経験した。患者は69歳,男性。右側下顎歯肉扁平上皮癌(T4aN3M0)に対し超選択的動注化学放射線治療を施行した。治療後1か月でのFDG-PET/CT検査で肝門部リンパ節腫大を認めた。その後,腹水を伴う腹膜播種性転移を認めたため入院したが急速に全身状態が悪化し多臓器不全にて死亡した。病理解剖検査の結果,肝門部リンパ節腫大と腹膜播種性転移はいずれも右側下顎歯肉癌の転移であると診断された。