抄録
血小板減少症は慢性肝疾患患者によくみられる血液異常である。2015年9月に「待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患における血小板減少症の改善」を効能・効果としてルストロンボパグがわが国で承認された。ルストロンボパグはトロンボポエチン受容体作動薬で,術前の内服により血小板数を増加させる比較的安全な,非侵襲的な血小板増加薬である。今回われわれは,C型肝炎に伴う血小板減少症の既往を有する下顎歯肉癌患者に対して,ルストロンボパグを術前に投与し手術を行った一例を経験したので報告する。症例は75歳女性。初診時,右側下顎歯肉に30×20mmの表面顆粒状の腫瘍性病変を認めた。C型肝炎の既往があり,初診時の血液検査では血小板数6.5万/μlと減少を認めた。右側下顎歯肉癌(cT2N0M0)の診断下に手術を予定した。血小板減少に関して手術11日前よりルストロンボパク(3mg/day)投与となった。手術予定2日前には血小板数13.6万/μlとなり,術中・術後も出血や血栓形成など認めずに良好に経過した。