数々ある放射線治療のモダリティの中で特に口腔悪性腫瘍に対して有用と思われるIMRT,粒子線治療,小線源治療,ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を取り上げ,本誌に残す貴重な機会を得た。
IMRTでは腫瘍への線量集中性を向上させ,近接臓器への線量を減量させることによって,高エネルギー外部X線照射の治療効果比を上昇させることができる。口腔悪性腫瘍におけるIMRTの最大の利点は,治療効果を損なわず,唾液腺の線量を減少させることによる口腔内乾燥の低減である。
陽子線や炭素線を用いた粒子線治療は,周囲の正常組織への線量は低く保ったまま,腫瘍へ高線量を照射することができる。頭頸部領域においては,主として悪性黒色腫,腺様囊胞癌といった放射線抵抗性腫瘍に対して行われ,良好な治療成績を上げてきた。口腔悪性腫瘍の約10%を占める非扁平上皮癌および肉腫のうち切除非適応例は粒子線治療の適応になり得る。粘膜炎・粘膜潰瘍や顎骨壊死といった口腔における放射線障害についても,粒子線治療の良好な線量集中性は有利に働く。
小線源治療では,表在型の口腔癌が良い適応とされ,今回は東京医科歯科大学医学部附属病院で施行した小線源治療症例255例,260部位の治療成績を報告する。局所制御率,後発頸部リンパ節転移発生率,有害事象を解析したが,表在型の2年局所制御率が90.9%に対し,内向型は78.9%,外向型は91.7%であった。
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は腫瘍選択性のある治療法であり,京大原子炉,および日本原子力研究開発機構において実施した有効な治療法がない全45例の治療成績を報告する。臨床的奏効率は87%,5年生存率は30%であった。
口腔悪性腫瘍に対する放射線治療は,有効な治療法の選択により,特に手術困難例,手術による根治が難しい症例での治療成績の向上と有害反応の低減が望まれる。
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