日本口腔腫瘍学会誌
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31 巻, 4 号
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第37回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会
シンポジウム3:「有望な放射線治療とは?」
  • 佐々木 良平, 出水 祐介, 吉村 亮一, 加藤 逸郎
    2019 年 31 巻 4 号 p. 157-173
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/22
    ジャーナル フリー
    数々ある放射線治療のモダリティの中で特に口腔悪性腫瘍に対して有用と思われるIMRT,粒子線治療,小線源治療,ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を取り上げ,本誌に残す貴重な機会を得た。
    IMRTでは腫瘍への線量集中性を向上させ,近接臓器への線量を減量させることによって,高エネルギー外部X線照射の治療効果比を上昇させることができる。口腔悪性腫瘍におけるIMRTの最大の利点は,治療効果を損なわず,唾液腺の線量を減少させることによる口腔内乾燥の低減である。
    陽子線や炭素線を用いた粒子線治療は,周囲の正常組織への線量は低く保ったまま,腫瘍へ高線量を照射することができる。頭頸部領域においては,主として悪性黒色腫,腺様囊胞癌といった放射線抵抗性腫瘍に対して行われ,良好な治療成績を上げてきた。口腔悪性腫瘍の約10%を占める非扁平上皮癌および肉腫のうち切除非適応例は粒子線治療の適応になり得る。粘膜炎・粘膜潰瘍や顎骨壊死といった口腔における放射線障害についても,粒子線治療の良好な線量集中性は有利に働く。
    小線源治療では,表在型の口腔癌が良い適応とされ,今回は東京医科歯科大学医学部附属病院で施行した小線源治療症例255例,260部位の治療成績を報告する。局所制御率,後発頸部リンパ節転移発生率,有害事象を解析したが,表在型の2年局所制御率が90.9%に対し,内向型は78.9%,外向型は91.7%であった。
    ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は腫瘍選択性のある治療法であり,京大原子炉,および日本原子力研究開発機構において実施した有効な治療法がない全45例の治療成績を報告する。臨床的奏効率は87%,5年生存率は30%であった。
    口腔悪性腫瘍に対する放射線治療は,有効な治療法の選択により,特に手術困難例,手術による根治が難しい症例での治療成績の向上と有害反応の低減が望まれる。
シンポジウム5:「口腔がんの理想的な再建手術とは?」
原著
  • 増田 智丈, 應谷 昌隆, 森友 梨奈, 小橋 寛薫, 白砂 兼光, 吉岡 秀郎
    2019 年 31 巻 4 号 p. 191-195
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/22
    ジャーナル フリー
    血小板減少症は慢性肝疾患患者によくみられる血液異常である。2015年9月に「待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患における血小板減少症の改善」を効能・効果としてルストロンボパグがわが国で承認された。ルストロンボパグはトロンボポエチン受容体作動薬で,術前の内服により血小板数を増加させる比較的安全な,非侵襲的な血小板増加薬である。今回われわれは,C型肝炎に伴う血小板減少症の既往を有する下顎歯肉癌患者に対して,ルストロンボパグを術前に投与し手術を行った一例を経験したので報告する。症例は75歳女性。初診時,右側下顎歯肉に30×20mmの表面顆粒状の腫瘍性病変を認めた。C型肝炎の既往があり,初診時の血液検査では血小板数6.5万/μlと減少を認めた。右側下顎歯肉癌(cT2N0M0)の診断下に手術を予定した。血小板減少に関して手術11日前よりルストロンボパク(3mg/day)投与となった。手術予定2日前には血小板数13.6万/μlとなり,術中・術後も出血や血栓形成など認めずに良好に経過した。
症例報告
  • 福田 修平, 黒嶋 雄志, 富岡 寛文, 及川 悠, 原田 浩之
    2019 年 31 巻 4 号 p. 197-202
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/22
    ジャーナル フリー
    口腔癌において,潜在性頸部リンパ節転移の顕在化は初回治療後から2年以内が大部分であり,2年以上の経過を辿って顕在化することはまれである。今回,2年以上経過した後,頸部リンパ節転移が顕在化した3例を報告する。症例1は38歳,女性。左側舌癌に対して組織内照射が施行された後,2年6か月で頸部リンパ節転移が顕在化した。症例2は47歳,女性。左側舌癌に対して舌部分切除術と組織内照射が施行された後,5年11か月で頸部リンパ節転移が顕在化した。症例3は57歳,男性。右側舌癌に対して舌部分切除術が施行された後,5年11か月で頸部リンパ節転移が顕在化した。潜在性頸部リンパ節転移の顕在化時期を予測することは現状では不可能である。頸部リンパ節転移の発見を遅らせないためには,長期にわたる注意深い経過観察と頸部リンパ節転移に関する患者教育が必要と考えられた。
  • 岩田 英治, 橘 進彰, 高井 美玲, 榎本 由依, 楠元 順哉, 高田 直樹, 明石 昌也
    2019 年 31 巻 4 号 p. 203-206
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/22
    ジャーナル フリー
    粘液脂肪腫は極めて稀な脂肪腫の亜型であり,本邦でこれまで報告された口腔内の発生例はわずか4例しかない。われわれは64歳男性の舌縁部に発生した粘液脂肪腫の1例を経験したので報告する。患者は舌の腫脹を主訴に紹介初診された。T1,T2強調像にて11×9×11mmの高信号を認めた。全身麻酔下に舌腫瘍摘出術を行った。病理組織学的所見は,成熟した大小不同の脂肪細胞の増殖からなり,間質に粘液腫様変化を認めたため,舌粘液脂肪腫と診断した。術後1年が経過するが再発は認めていない。
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