Fanconi貧血(FA)は高率で固形癌を合併する染色体不安定症候群である。今回われわれはFA患者に発症した舌扁平上皮癌の1例を経験したため,報告する。
患者は23歳男性。左側舌縁部の腫瘤と疼痛を主訴に来院した。3歳時にFAと診断され,7歳時に造血幹細胞移植を受けた既往がある。左側舌縁部に大きさ45×18×28mmの潰瘍を伴う腫瘤を認め,全麻下に両側根治的頸部郭清術変法(内頸静脈,副神経温存:郭清範囲Level Ⅰ〜Level Ⅴ),舌亜全摘術および腹直筋皮弁による再建術を施行した。
術後4か月で局所頸部再発を認め救済手術を行うも,その2か月後に舌骨傍領域に再発を認め,切除不能と診断し,セツキシマブによる分子標的薬併用放射線療法を施行した。しかしながら,腫瘍の増大に伴い,初回手術から18か月後に原病死となった。