日本口腔腫瘍学会誌
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原著
  • 木村 将士, 加藤 勲, 石橋 謙一郎, 柴田 章夫, 西脇 崇介, 福村 元洋, 曽根 康博, 長尾 徹, 梅村 昌宏
    2021 年 33 巻 3 号 p. 81-89
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー
    本研究は,positron emission tomography (PET)/computed tomography(CT)を用いた18F-fluorodeoxyglucose(FDG)集積の腫瘍内不均一性の主要な2つの評価指標であるheterogeneity index (HI)とheterogeneity factor (HF)について,口腔扁平上皮癌患者における予後因子としての有用性について明らかにすることを目的とした。対象は外科的治療を行った62症例であり,後方視的に解析を行った。術前のPET画像を用いHI,HF,maximum standardized uptake value(SUVMmax),metabolic tumor volume (MTV),total lesion glycolysis (TLG)を算出した。HIは原発腫瘍のSUVmaxをSUVmeanで除する(SUVmax/SUVmean)ことで算出し,HFは体積-閾値関数の30〜70%の範囲の微分(dV/dT)を求めることで算出した。全生存期間(overall survival:OS),無病生存期間(disease-free survival:DFS)に対してPETおよび臨床病理学的な指標を用い単変量および多変量解析を実施した。
    OSでは単変量および多変量解析の結果,HI高値(SUVmeanの閾値はSUVmaxの30%)が予後不良と関連していることが明らかになった[ハザード比(hazard ratio;HR)=11.57;95%信頼区間(confidence interval;CI)=1.45-92.28;P=0.021]。さらに,DFSに対する単変量解析および多変量解析では,TLG高値(MTVおよびSUVmeanの閾値はSUV4.0)が予後不良と関連していることが明らかになった(HR=14.48;95%CI=1.27-164.78;P=0.031)。HIおよびTLGはOSおよびDFSの統計学的に有意な予後因子である可能性が示唆された。
  • 林田 咲, 柳本 惣市, 大鶴 光信, 三好 太郎, 大森 景介, 坂元 裕, 森下 廣太, 鳴瀬 智史, 梅田 正博
    2021 年 33 巻 3 号 p. 91-97
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー
    放射線性顎骨壊死(ORN)は頭頸部癌に対する放射線治療後の重篤な晩期有害事象である。照射部位の顎骨だけでなく軟組織の損傷も強く,外科療法は躊躇されてきた。今回,当科で経験したORN患者20例(上顎6例,下顎13例,上下顎1例)について臨床的に検討した。初回治療として保存療法が18例(20顎)に,外科療法が2例(2顎)に行われた。保存療法により治癒が得られたのは1例(1顎)のみであった。初回治療として外科療法が行われた2例(2顎)および保存療法で経過不良のため後に外科療法を行った13例(15顎)について手術法と経過について検討した。上顎骨発生例の3顎はいずれも単回の腐骨除去により治癒が得られた。下顎骨発生例12顎では単回の手術で治癒が得られたのは8顎(腐骨除去1顎,辺縁切除4顎,区域切除3顎),複数回の手術で治癒が得られたのは3顎(2回2顎,4回1顎)で,残りの1顎は1回目の手術(掻爬)後に再発を認め現在再手術を計画中である。複数回手術例では最終的には全例区域切除以上の手術が行われた。手術を施行した15顎のうち14顎で最終的に治癒が得られた。保存療法の治癒率が低いことや,保存療法中に病変が拡大する傾向があることから,手術が可能な症例では初回治療として外科療法を選択することも今後の選択の一つとなると思われた。
症例報告
  • 近藤 英司, 田中 宏和, 川本 真貴子, 福田 浩信, 小山 吉人, 山本 翼, 盛岡 昌史, 山田 慎一, 栗田 浩
    2021 年 33 巻 3 号 p. 99-105
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー
    紡錘細胞扁平上皮癌は紡錘形細胞を主体とした多形性細胞の増殖を特徴とし,扁平上皮癌の特殊系とされている。われわれは,下顎骨内に発生したと考えられた紡錘細胞扁平上皮癌のまれな症例を報告する。67歳の男性が下顎腫瘍摘出術を受けた(30×15mm大の智歯を含むX線透過性病変)。口腔粘膜に異常所見は認めなかった。摘出組織の病理組織学的診断は紡錘細胞扁平上皮癌であった。その後,追加治療を目的に信州大学医学部歯科口腔外科教室を紹介された。われわれは選択的頸部郭清術,下顎区域切除術および金属プレート,遊離腹直筋皮弁による再建を実施し,補助化学放射線療法を継続して行った。5年経過し,再発所見は認めない。
  • 古藤 悠希, 野口 忠秀, 土屋 欣之, 大谷津 幸生, 岡田 成生, 早坂 純一, 去川 俊二, 森 良之
    2021 年 33 巻 3 号 p. 107-112
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー
    縫合糸膿瘍は,頭頸部悪性腫瘍の術後にしばしば遭遇し,その臨床症状ならびに画像所見から局所再発やリンパ節転移との鑑別を要することがある。
    今回われわれは,口腔癌頸部郭清術後の創部に多発した縫合糸膿瘍の1例を経験したので報告する。
    患者は71歳,女性。右側口底部扁平上皮癌に対して両側肩甲舌骨筋上郭清術,口底部腫瘍切除術,血管柄付き遊離前腕皮弁による再建術を施行した。術後4か月頃から両側顎下部に皮下膿瘍を認めるようになり,膿瘍の掻爬物中に縫合糸を認めたことから縫合糸膿瘍と診断した。その後も顎下部から中頸部に多発した皮下腫瘤を認めるようになり,CT,MR,FDG-PETでは頸部再発が疑われる所見であった。超音波検査では腫瘤は縫合糸膿瘍の可能性が示唆された。顎下部皮下腫瘤に対し摘除生検を施行したところ,腫瘤内には結紮に使用した絹糸が認められた。病理組織学所見でも縫合糸を取り囲むように限局した炎症性細胞浸潤,毛細血管増生からなる肉芽組織を認め,縫合糸膿瘍と診断した。経過観察中も頸部ならびに皮弁採取部の前腕部の皮下にも同様の所見を認めたため,腫瘤の摘除を行ったところ縫合糸膿瘍であった。
    本邦において血管結紮への吸収性縫合糸の転換はまだ課題が多く,適切な条件下でエナジーデバイスを有効利用することは,縫合糸膿瘍の形成リスクを減少させるための1つの方法に成り得ると考えられる。
  • 小川 千晴, 臼田 慎, 宮下 英高, 莇生田 整治, 内田 育宏, 元井 亨, 寺尾 保信, 大山 定男
    2021 年 33 巻 3 号 p. 113-118
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー
    類上皮肉腫は2020年WHO軟部腫瘍分類では分化方向未確定の悪性軟部腫瘍群に分類される。病変の増大は緩徐であるが高率に局所再発と転移を生じる高悪性度の軟部肉腫であり,ほとんどの軟部肉腫と異なりリンパ節転移をきたしやすい傾向がある。根治的治療としては広範切除が第一選択となる。若年成人の上肢遠位に好発し口腔内に発生する例は極めてまれである。今回われわれは下唇軟部組織に発生した微小な類上皮肉腫の1例を経験したので報告する。
    患者は62歳,女性。2018年6月頃より左側下唇の硬結を自覚した。初診時,左側下唇粘膜下に5mm径の弾性硬の小結節を認め境界はやや不明瞭であった。局所麻酔下に切開生検を施行したところ類上皮肉腫の病理組織診断であった。CT,MRI,PET-CTでは頸部および遠隔転移は認めなかった。2019年2月,全身麻酔下に下唇広範切除,左根治的頸部郭清術変法(typeⅢ),左側前腕皮弁再建術を施行した。その後,当院骨軟部腫瘍科にてAI療法(Doxorubicin+Ifosfamide)を5コース施行した。現在術後2年経過し,再発転移はなく経過良好である。
  • 鳴瀬 智史, 土橋 宏輝, 柳本 惣市, 古川 浩平, 大森 景介, 梅田 正博
    2021 年 33 巻 3 号 p. 119-125
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー
    Fanconi貧血(FA)は高率で固形癌を合併する染色体不安定症候群である。今回われわれはFA患者に発症した舌扁平上皮癌の1例を経験したため,報告する。
    患者は23歳男性。左側舌縁部の腫瘤と疼痛を主訴に来院した。3歳時にFAと診断され,7歳時に造血幹細胞移植を受けた既往がある。左側舌縁部に大きさ45×18×28mmの潰瘍を伴う腫瘤を認め,全麻下に両側根治的頸部郭清術変法(内頸静脈,副神経温存:郭清範囲Level Ⅰ〜Level Ⅴ),舌亜全摘術および腹直筋皮弁による再建術を施行した。
    術後4か月で局所頸部再発を認め救済手術を行うも,その2か月後に舌骨傍領域に再発を認め,切除不能と診断し,セツキシマブによる分子標的薬併用放射線療法を施行した。しかしながら,腫瘍の増大に伴い,初回手術から18か月後に原病死となった。
  • 大田 圭一, 糸井 勇人, 領家 崇, 山本 哲嗣, 吉田 寿人, 松田 慎平, 今村 好章, 吉村 仁志
    2021 年 33 巻 3 号 p. 127-135
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー
    エナメル上皮癌はエナメル上皮腫の悪性型であり,非常に稀な歯原性腫瘍である。今回われわれは,上顎骨に発生したエナメル上皮癌の1例を経験したので報告する。症例は62歳の女性。右側頰部の圧痛を主訴に他院を受診した。パノラマX線写真で右側上顎骨のX線透過像を指摘され,某病院歯科口腔外科を受診した。精査後,右側上顎骨腫瘍あるいは囊胞の臨床診断の下に病変の摘出術を受けた。病理組織学的検査にてエナメル上皮癌の診断となり,治療目的に当科へ紹介となった。全身麻酔下に右側上顎部分切除術を施行した。術後3年が経過するが,現在まで再発や転移の所見は認めていない。過去10年間の顎骨領域のエナメル上皮癌の症例報告を検討したところ,36例中23例(63.9%)は良性腫瘍と臨床診断され,その中ではエナメル上皮腫の診断が最も多く12例(52.2%)であった。一方,悪性腫瘍の臨床診断に至っていた症例は13例(36.1%)であった。生検を行った27例では,25例(92.6%)が悪性腫瘍の病理組織学的診断を得ており,そのうち19例(76%)がエナメル上皮癌と診断されていた。臨床所見や画像検査ではエナメル上皮癌はエナメル上皮腫との鑑別に苦慮する可能性があるが,生検の実施により,適切な診断や治療方針の決定に至ることが可能となると考えられた。
  • 中井 康博, 中井 史, 合田 千里, 伏見 麻央, 三宅 実
    2021 年 33 巻 3 号 p. 137-141
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー
    われわれは難治性てんかんに対して迷走神経刺激(VNS)療法を施行中の患者に発症した下顎歯肉癌の1例を報告する。患者は65歳,男性。左下顎歯肉部の疼痛を主訴に当院を受診した。既往歴に脳出血の後遺症による続発性てんかんがあり,薬物のみでのコントロールが困難でVNS療法が施行されていた。左側下顎歯肉には30×20mmの表面乳頭状の腫瘤形成を認めた。組織生検および画像検査から,下顎歯肉癌(SCC,T2N0M0)と診断した。治療として左頸部郭清術(Level 1-2),左下顎区域切除術,遊離腓骨皮弁再建術を行った。VNSはLevel 3領域にあり,術野に露出しなかった。VNSのためにMRIの撮影や電気メスの使用ができなかった。術後にメーカー担当者とVNSの動作確認を行った。術後1年1か月後に再建骨に3本のインプラントを埋入し,術後1年11か月後にインプラントオーバーデンチャーを装着した。術後約3年が経過し,再発転移無く経過良好である。
  • 津田 翔真, 鳴瀬 智史, 古川 浩平, 三好 太郎, 藤田 修一, 梅田 正博
    2021 年 33 巻 3 号 p. 143-149
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー
    形質細胞腫は形質細胞の腫瘍性増殖からなる悪性腫瘍で,骨に孤立性に発生するのは稀である。今回われわれは下顎骨に発生した孤立性形質細胞腫を経験したため,その概要を報告する。
    患者は42歳女性。右側下顎枝に大きさ16×9mmの骨吸収像を指摘され,精査目的に当科を紹介された。6年前のパノラマX線写真と比較すると,骨吸収像の拡大を認めたため,全身麻酔下に切除生検を施行した。病理組織学的検査結果で形質細胞腫の診断を得た。全身骨,骨髄穿刺,血液検査,尿検査で異常所見はなく,下顎骨孤立性形質細胞腫の確定診断を得た。放射線照射を45Gy施行し,41か月後現在再発なく,また多発性骨髄腫への移行もなく経過良好である。
  • 仲宗根 敏幸, 又吉 亮, 宮本 昇, 後藤 新平, 平野 惣大, 牧志 祥子, 中村 博幸
    2021 年 33 巻 3 号 p. 151-158
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー
    神経節細胞腫(GN)は,交感神経系または副交感神経系の神経節から発生すると考えられているまれな良性神経腫瘍である。3歳の時,副腎と右眼窩周囲骨に腫瘍を認め,神経芽腫(NB)Stage Ⅳと診断された。化学療法後,腫瘍を切除し,副腎の神経節芽腫(GNB)と眼窩周囲骨のGNの病理組織学的診断を得た。腫瘍は初発から21年後に頭蓋内硬膜で再発し,生検組織からGNと診断された。顎骨内のGNは,24年後に左側下顎,27年後に右側下顎で明らかとなり,切除された。病理組織学的には,腫瘍は成熟した神経節細胞で構成されていた。さらに,免疫組織化学で腫瘍細胞は,vimentin, S-100,neurofilament,Anti-Glia Fibrillary Acidic Protein (GFAP)およびsynaptophysinに対して陽性であり,α-Smooth muscle actin(α-SMA)およびCytokeratin AE1/AE3に対して陰性であった。Ki-67 labeling index (LI)は1%であった。最終診断としてGNであった。本症例は,一連の臨床経過から副腎腫瘍であったNBが両側下顎骨に転移し,長期経過をたどってGNとして発生した非常にまれな症例である。
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