抄録
形質細胞腫は形質細胞の腫瘍性増殖からなる悪性腫瘍で,骨に孤立性に発生するのは稀である。今回われわれは下顎骨に発生した孤立性形質細胞腫を経験したため,その概要を報告する。
患者は42歳女性。右側下顎枝に大きさ16×9mmの骨吸収像を指摘され,精査目的に当科を紹介された。6年前のパノラマX線写真と比較すると,骨吸収像の拡大を認めたため,全身麻酔下に切除生検を施行した。病理組織学的検査結果で形質細胞腫の診断を得た。全身骨,骨髄穿刺,血液検査,尿検査で異常所見はなく,下顎骨孤立性形質細胞腫の確定診断を得た。放射線照射を45Gy施行し,41か月後現在再発なく,また多発性骨髄腫への移行もなく経過良好である。