抄録
本研究では,デンマークオリジナルサワー種を日本に持ち帰り植え継ぎを行っているサワー種の菌叢解析結果に基づき,上記サワー種から分離され,主要菌叢と同一と考えられるLactobacillus sanfranciscensis HITL11,L. paralimentarius HITL01及びSaccharomyces cerevisiae ADHTS19を用いてサワー種の再構築を行った。対照としては,デンマークオリジナルサワー種を日本に持ち帰り,小麦を用いて植え継ぎを行っている種(小麦日本受え継ぎ種)を用いた。本研究では,これらの種を用いて生地を調製し,サワーブレッドの試作を行った。試作したサワーブレッドについて,各種成分の分析及び3D形状の測定を行ったところ,全ての分析データについて有意な差が見られず,純粋分離した微生物株を用いて再構築したサワー種から試作したサワーブレッドは,対象とした小麦日本植え継ぎ種とほぼ同一の品質であると見なすことが出来た。これらのことから,純粋分離した微生物株を,菌叢解析データに基づき再構成することで,安定生産が困難であるとされているサワーブレッドの安定生産が出来る可能性を示すことが出来た。