抄録
放射線性顎骨壊死(ORN)は頭頸部癌に対する放射線治療後の重篤な晩期有害事象である。照射部位の顎骨だけでなく軟組織の損傷も強く,外科療法は躊躇されてきた。今回,当科で経験したORN患者20例(上顎6例,下顎13例,上下顎1例)について臨床的に検討した。初回治療として保存療法が18例(20顎)に,外科療法が2例(2顎)に行われた。保存療法により治癒が得られたのは1例(1顎)のみであった。初回治療として外科療法が行われた2例(2顎)および保存療法で経過不良のため後に外科療法を行った13例(15顎)について手術法と経過について検討した。上顎骨発生例の3顎はいずれも単回の腐骨除去により治癒が得られた。下顎骨発生例12顎では単回の手術で治癒が得られたのは8顎(腐骨除去1顎,辺縁切除4顎,区域切除3顎),複数回の手術で治癒が得られたのは3顎(2回2顎,4回1顎)で,残りの1顎は1回目の手術(掻爬)後に再発を認め現在再手術を計画中である。複数回手術例では最終的には全例区域切除以上の手術が行われた。手術を施行した15顎のうち14顎で最終的に治癒が得られた。保存療法の治癒率が低いことや,保存療法中に病変が拡大する傾向があることから,手術が可能な症例では初回治療として外科療法を選択することも今後の選択の一つとなると思われた。