抄録
高悪性度転化(high-grade transformation:HGT)は,腺様囊胞癌(adenoid cystic carcinoma:AdCC)ではまれな現象であり,HGTにより悪性度の高い状態となり,典型的なAdCCと比較して,頸部リンパ節転移や遠隔転移を生じる傾向が高い。患者は69歳女性で,口蓋正中部の腫脹の精査を主訴に受診した。初診時,口蓋正中やや左側寄りに30×15mm大の広基性腫瘤を認めた。生検の結果,口蓋腺より発生した唾液腺悪性腫瘍との診断であったが,確定診断には至らなかった。そのため,全身麻酔下に全切除術を施行した。初診から切除までの間にも腫瘍は著明な増大を示した。切除標本は,定型的なAdCCの部分と,それに接して存在するHGT部分の2つの要素で構成されており,急速に増大した部分は,病理組織学的にHGT-AdCCで占められていた。切除標本にて断端陽性の所見を認めたため,術後放射線照射を行い,局所においては占拠性病変の出現はなかったが,その後の画像評価にて転移性肺腫瘍を認め,同時化学放射線療法を施行するも,死亡の転帰をとった。