抄録
血管平滑筋腫は平滑筋細胞に富む四肢に多く,口腔領域の発生は比較的まれである。今回口蓋に発生した血管平滑筋腫を経験したので報告するとともに,文献的に考察した。
症例は72歳男性で,口蓋の無痛性腫脹を主訴に当科を紹介された。肉眼的に硬口蓋に12×15mmの境界明瞭な弾性軟の結節病変を認めた。良性腫瘍の診断のもと切除が行われた。病理組織学的診断は血管平滑筋腫であった。
本症例も含めた92例の本邦報告例について検討した。男性に多く,約2/3が口蓋または口唇に発生し,組織型は静脈型が多かった。術前診断は困難で,術後組織学的にさまざまな免疫染色を施した上で最終診断が下されていた。治療法としては全例に手術が行われ予後は良好であった。