抄録
1975年4月から1995年3月までの20年間に, 岩手医科大学歯学部附属病院第二口腔外科を受診した15歳以下の小児のうち, 病理組織学的に確定診断を得た59例の顎口腔領域腫瘍について臨床的に検討を行った。腫瘍59例の内訳は, 良性腫瘍57/59例 (96.6%) , 悪性腫瘍2/59例 (3.4%) であった。良性腫瘍のうち軟組織腫瘍は13/57例 (22.8%) で血管腫が最も多く, 顎骨腫瘍は44/57例 (77.2%) で歯牙腫が最も多かった。発生部位は軟組織腫瘍では口唇, 舌, 頬粘膜に多く, 顎骨腫瘍では下顎に多くみられた。性差は認められなかった。顎骨腫瘍は6歳以上で増加傾向にあり, 特に歯原性腫瘍の頻度が高くなっていた。良性腫瘍57例は外科療法により全例経過良好であった。悪性腫瘍2例のうち軟骨肉腫は手術を行い経過良好であった。Ewing肉腫は三者併用療法を行うも腫瘍死の転帰をとった。