日本口腔腫瘍学会誌
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口腔内転移腫瘍の臨床的検討
清野 政孝大林 武久右山 裕則牧 正啓八木 義照太田 和俊坂本 真由美西川 文篠原 正徳
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キーワード: 口腔癌, 転移性腫瘍, 肺癌
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2000 年 12 巻 4 号 p. 321-326

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抄録

他臓器から口腔への腫瘍の転移は比較的稀であり, それ故にその診断に迷ったりその処置に苦慮することが多い。そこで, 今回, 当科にて経験した口腔内転移性腫瘍7例について臨床的な検討を行い, これまでの報告と比較検討した。
口腔内への転移腫瘍の発症部位は上顎骨2例, 上顎歯肉部1例, 下顎骨4例であった。口腔内転移腫瘍の原発部位は肺3例, 前立腺, 大腸, 胆嚢, 下肢部皮膚が各1例であった。転移腫瘍の組織型は腺癌4例, 扁平上皮癌2例, 悪性黒色腫1例であった。当科初診時の転移巣の臨床所見は, 有痛性腫脹4例, 無痛性腫脹2例, 無痛性腫瘤1例であった。原発病変初回治療時から口腔内に病変を認めるまでの期間は, 5カ月以内が4例, 9カ月と10年が各1例であった。なお, 1例は口腔内転移巣の方が原発巣より先に発見された。口腔内転移巣に対する治療は, 2例のみに外科処置を行ない, 他は処置しなかった。予後は口腔内転移後短期間での死亡例 (原病死) が多く, きわめて不良であった。今回の検索の結果, 口腔腫瘍の診断においては転移性腫瘍の可能性も念頭に置き, 十分な診査を行う必要性が示唆された。

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