抄録
上皮性異形成は口腔粘膜の前癌病変における病理組織学的な用語として用いられている。しかしながら, その診断には様々な診断基準が用いられているのが現状である。そこで, 舌扁平上皮癌50例 (1985-1998) の切除断端部における上皮性異形成について, 数種の診断基準により検討し, 局所再発との関連性を検討した。
1) 上皮性異形成の出現率ではBurkhardtの診断基準が, 他の診断基準より高くなっていた。
2) それぞれの診断基準のModerateおよびSevereでの80%以上に局所再発が認められた。しかしながら, 上皮性異形成の頻度および程度と局所再発率では, それぞれの診断基準に有意差は認められなかった。
3) 口腔粘膜の上皮性異形成の診断にはWHO (1997) の診断基準が有用であることが示唆された。