日本口腔腫瘍学会誌
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舌神経浸潤により頭蓋内進展をきたしたと考えられた下顎歯肉癌の1例
木下 浩二西田 光男安田 真也堀 信介
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2006 年 18 巻 1 号 p. 17-23

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抄録
今回われわれは, 下顎歯肉扁平上皮癌が, 一次治療後に舌神経浸潤により頭蓋内まで進展したと考えられた症例を経験した。患者は, 55歳男性で, 初診時, 左側頬部の電撃様疼痛, 左側オトガイ神経領域の知覚鈍麻を認めた。術前放射線治療後に, 腫瘍切除術, 左側全頸部郭清術, 右側顎下部郭清術, 大胸筋皮弁再建術を施行したが, 3か月後MRI画像にて頭蓋内まで進展した腫瘍を認め, 以後, 急速な進展のため4か月後には死亡した。後の病理組織学的検討より, 切除物中枢断端の舌神経東内に腫瘍の存在が確認され, 残存した腫瘍が再発し, 下顎神経に沿って頭蓋内まで進展したものと考えられた。このように, 下顎骨への浸潤傾向が強くオトガイ神経領域の知覚異常を伴う症例の場合, 術前もしくは術後の照射範囲の設定においては頭蓋底を十分に含め, 切除範囲は神経浸潤を考えて, より中枢側へ拡大することが予後改善に肝要であると考えられた。
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