放射線性下顎骨骨壊死の治療には, 原病巣の治癒状況を考慮しながら骨壊死の進行状態に応じた対処が必要である。今回われわれは, 骨壊死が進行した際に適応される下顎骨区域切除と血管柄付き遊離組織移植術の前段階として, 多血小板血漿 (PRP) の積極的応用と, 新鮮海綿骨骨髄細片 (PCBM) 移植ならびに創外固定を利用した消炎療法を組み合わせた三段階の外科的治療法を考案した。
対象及び方法: 2002年1月から2004年12月までの間で, 口腔癌11例, 中咽頭癌3例の放射線治療後に発生した放射線性下顎骨骨壊死の計14症例を対象とした。第I段階: 腐骨形成が少なく歯槽骨切除のみの場合には, PRPを露出骨面に置き, 粘膜弁で閉創した。第II段階: 下顎の中心部にまで腐骨切除が及ぶ場合には, PRPに加えてPCBMを移植し, 局所皮弁で閉創した。第III段階: 区域欠損に及ぶ場合には, 創外固定を用いて残存骨の位置を保持しながら軟組織の消炎を待ち, その後に骨移植を行った。
結果: 第I段階治療後の4例では, すべての症例に露出骨面の減少と疼痛症状の緩解が認められたが, 外側皮質骨の壊死が再発した。第II・第III段階の治療後は良好で, 8例では骨再生が認められた。2例は感染があり, 掻爬あるいは再度骨移植を必要とした。
考察: 骨壊死治療においては軟組織の消炎と血行改善することが重要と考えられた。その上で, 創外固定を用いた消炎待機は効果的であり, また, PRPは治癒過程に有用であると思われた。
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