日本口腔腫瘍学会誌
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進行口腔癌に対する術前治療の効果
―半連続全割病理標本による種瘍残存様式―
河野 憲司
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2008 年 20 巻 4 号 p. 272-276

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抄録
進行口腔癌において術前化学放射線同時併用療法による癌組織の変化を手術材料の半連続全割切片で検討した。対象症例は舌原発6例, 口底原発3例, 下顎歯肉原発3例の進行扁平上皮癌12例で, 放射線外照射とCBDCA超選択的動注またはTS1内服の同時施行後に外科手術を行った。術前治療の臨床的効果判定はCR3例, PR5例, MR2例, NC2例であった。
まず各症例の割面ごとに生存癌胞巣と変性・壊死胞巣の分布を検索したところ, 生存癌胞巣の残存様式は浅在型と深在型に分類できた。注目すべき点は, 同一症例でも割面によって癌胞巣残存様式ならびに組織学的効果判定 (大星・下里分類) が異なる症例が見られたことである。さらにGrade2症例の中には大部分の癌胞巣が変性・壊死に陥っているにもかかわらず, 浸潤先端に生存癌胞巣を散見するものが見られた。かかる所見から, 治療により癌の縮小は必ずしも粘膜表層へ向けて退縮するように起こるわけではないため, 術前治療奏効例であっても縮小手術の安全性は保障できないことが示唆された。
なお組織学的効果判定はGrade 4aが2例, Grade 2bが4例, Grade 2aが5例, Grade 1が1例で, とくにPR症例ではGrade 4aからGrade 1までのものが見られ, 臨床的判定と組織学的判定の乖離を生じていた。
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