日本口腔腫瘍学会誌
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口腔領域扁平上皮癌のペプロマイシンに対する感受性試験の研究
金 在哲
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1993 年 5 巻 1 号 p. 1-13

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抄録
Bogden らにより報告されたマウス腎被膜下移植法 subrenal capsule assay (SRC法) は, 個々の癌患者に対する優れた制癌剤感受性試験である。しかしながら本法には宿主免疫反応が惹起される点などに依然として問題がある。
一方, ペプロマイシン (PEP) は, ブレオマイシン (BLM) の誘導体で, 広いスペクトラムをもち, 肺毒性は BLM と比較して低いといわれている制癌剤である。また一般に口腔領域の扁平上皮癌, とくに高分化型扁平上皮癌に対し, しばしば用いられる。しかしながら臨床において高分化型扁平上皮癌に対する無効例を経験することがある。
そこで本研究では口腔領域扁平上皮癌の PEP に対する感受性の詳細について, 川原らの改良法を用い, 上記の問題点について詳細に検討を行った。マウスはX線照射して免疫抑制したものを用い, 移植後1, 3, 5日目に PEP を総投与量60.0mg/kgを投与したとき, 他の方法に比べて最も高い腫瘍増殖抑制効果を認めた。
ついで72例の症例について検討したところ, その評価可能率は100%であった。このうちの56例で腫瘍の分化型と SRC 法の結果について検討を行ったところ, 高分化型扁平上皮癌と他の分化型の扁平上皮癌とでは著明な差異は認められなかった。また臨床効果との比較が可能であった16例について SRC 法の結果と臨床効果とを検討したが, これらには14例 (87.5%) に相関関係が認められた。
この結果, 改良を加えた SRC 法は高分化型扁平上皮癌に対する PEP の感受性を予測しうる実験系であることが判明した。また PEP は必ずしも高分化型扁平上皮癌に効果があるとは認め難いため, PEP を用いた化学療法の前には本法を施行して感受性を検索することの必要性が示唆された。
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