抄録
1988年から1993年までに当科で治療を行った65歳以上の高齢口腔扁平上皮癌患者62例について, 臨床的検討を行った。
1.対象62例の年齢は65~89歳にわたり, 平均年齢は72歳であった。性別は男性39例, 女性23例であり, 男女比は1.7: 1であった。また, 80歳以上の症例は62例中11例 (18%) に認められた。
2.初発より3か月未満に来院した症例が過半数以上を占めていた。
3.主訴では疼痛が最も多かった。
4.原発部位別症例数は舌: 19/62例 (31%) , 上顎歯肉: 10/62例 (16%) , 口底, 口峡咽頭: 8/62例 (13%) , 下顎歯肉, 頬粘膜: 7/62例 (11%) , 口唇: 3/62例 (5%) であった。
5.1987年UICC病期分類に従った臨床病期別症例数では, Stage III, IVの症例が比較的多く認められた (32/62, 52%) 。
6.基礎疾患を有していた症例は, 65歳以上の高齢者62例全例に認められた。その内訳は循環器疾患: 38例, 消化器疾患: 24例, 呼吸器疾患: 22例, 代謝性疾患: 11例, 血液・造血器疾患: 6例, 腎疾患: 3例であった。
7.対象62例中, 10例に姑息的治療, 52例に根治的治療が施行された。根治的治療が施行された52例中48例には外科治療が施行された。
5年累積生存率は全症例では57%, 根治的治療例では67%であった。