抄録
多形性腺腫は唾液腺で最も多くみられる腫瘍であり, その多彩な病理組織学的所見が大きな特徴の一つである。本腫瘍において, 病理組織学的にしばしば小さな嚢胞がみられるが, 肉眼的にみられるような大きな嚢胞を形成することはまれである。
今回, 28歳男性の左側耳下腺にみられた, 大きな嚢胞を伴う多形性腺腫の1例を経験したので報告した。各種検査を行ったが, 今回は, 造影CTによる所見が診断に最も有効であった。
腫瘍は外科的に摘出し, 病理組織学的に多形性腺腫の診断を得た。
術後5年を経過するが再発の傾向なく, 経過良好である。