日本小児アレルギー学会誌
Online ISSN : 1882-2738
Print ISSN : 0914-2649
ISSN-L : 0914-2649
原著
小児食物アレルギー患者における除去食解除の指標と保護者の意識調査
藤塚 麻子菅井 和子船曳 哲典相原 雄幸
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 22 巻 5 号 p. 779-786

詳細
抄録

【目的】食物アレルギー患者の多くは成長とともに寛解する.不要な除去を続けることは小児や家族にとって大きな負担となる.そこで当院外来通院食物アレルギー患者の経過や日常生活上の問題点を具体的に把握するためアンケート調査を行った.
【アンケート調査対象・期間】2004年4月以降初診で食物アレルギーと診断し,当院に半年以上定期通院し,除去食を経験したことのある患者の保護者を対象に2006年1~6月に調査を実施した.
【結果】有効回答は62名中,男47名,女15名.初診時平均月齢16ヶ月.調査時平均月齢30ヶ月.除去食を続ける上での保護者の心配は誤食,栄養に関して多くみられた.卵,牛乳,小麦の解除時平均月齢はそれぞれ28ヶ月,25ヶ月,18ヶ月で,卵除去児での特異的 IgE 値は初診時18.64±3.79から解除時13.58±3.71へと有意に低下した(対数換算1.01±0.09から0.49±0.11,p =3.26×10−5).
【結論】除去食を続けることは,明らかに保護者の QOL を低下させている.今回の結果より卵,牛乳では2歳すぎ,小麦では1歳半頃に特異的 IgE 値を参考にして除去食の解除を検討する時期と考えた.適切に解除を進め,保護者の QOL を改善させるためには,具体的な栄養指導を含めた教育を行うとともに医師と栄養士,心理士,学校職員との連携がさらに必要と考えられる.

著者関連情報
© 2008 日本小児アレルギー学会
前の記事 次の記事
feedback
Top