皮膚, 上下気道, 腸管など異所性のアレルギー疾患が異時性に発症するアレルギーマーチのなかでも, アトピー性皮膚炎患者が遅れて喘息を発症することは古くより知られている現象である. これらの患者の一部に皮膚バリア関連分子であるフィラグリンの遺伝子変異との関連が見出されたことにより, アトピー性皮膚炎合併喘息の発症に経皮アレルゲン感作がかかわっていることが明らかとなった. フィラグリンや細胞間脂質などからなる角質バリアと顆粒層の表皮細胞間のタイトジャンクションで形成される皮膚バリアは, 体内からの水分蒸散を防ぐとともに体外からのアレルゲン等の異物の侵入を防いでいるが, 遺伝子変異以外にもさまざまな機械的・化学的・生物学的要因によって傷害される. さらに, 傷害された皮膚から抗原が侵入する際にはTSLPやIL-23/Th17免疫応答など特異な反応が生じて, Th2型応答をさらに増幅する. 一方で, 傷害を受けていない皮膚に微量の抗原を負荷することで制御性T細胞を誘導し, アレルギーマーチを抑制しうる可能性も示されている. 経皮感作の機序とそれに付随して生じる免疫病態を明らかにすることで, 小児発症アトピー型喘息の新しい予防・治療法の開発に繋がる可能性が期待される.