日本小児アレルギー学会誌
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30 巻, 2 号
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原著
  • 柳田 紀之, 中村 揚子, 佐藤 さくら, 海老澤 元宏
    2016 年 30 巻 2 号 p. 147-154
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/29
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    【目的】鶏卵アナフィラキシー児の急速経口免疫療法 (OIT) 中に抗ヒトIgEモノクローナル抗体であるオマリズマブ (OMB) を併用した症例を経験した. その臨床経過を検討し, 鶏卵のOITに対するOMBの併用効果に関して報告する. 【症例】症例は7歳男児で, 鶏卵アレルギーに対するOIT開始9か月後に気管支喘息の悪化を認め, OMBの投与が開始された. 患児は即時型の小麦アレルギーを合併していた. 【結果】OIT開始時の全身症状の誘発閾値は加熱全卵17.5gで, 急速法退院時の摂取量は炒り卵で全卵7.5g相当, 5か月時に維持量の60g相当に到達した. 開始から9か月まで1回摂取当たり11.6%に症状を認めていたが, OIT開始9か月時にOMBを開始した後は, 頻度は2.2~5.8%に著減した. 13か月時に10日間の除去のうえ, 鶏卵1個を無症状で食べられることを確認した. その後, 小麦もOITの方法に準じて摂取量を指示し, 制限なく摂取できるようになった. 【結語】OMBの併用により症状誘発の頻度が低下し, OITを安全に行うことができた. OMBの併用が鶏卵OITにおいて有効な手段になりうる可能性が示唆された. OMB投与終了後に耐性獲得の再評価が必要である.
  • 小張 真吾, 磯崎 淳, 山崎 真弓, 田中 晶, 安藤 枝里子, 中村 陽一
    2016 年 30 巻 2 号 p. 155-163
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/29
    ジャーナル 認証あり
    【背景】近年, 食物アレルギー児の数は増加し, 乳幼児を預かる施設での対応が求められている. 【目的】横浜市内の幼稚園・保育所での食物アレルギー児への対応の実態を明らかにする. 【方法】横浜市内の全幼稚園・保育所を対象に, 食物アレルギー児の把握法, 食事状況, アドレナリン自己注射薬 (エピペン®) の使用などについて無記名アンケート調査を行った. 【結果】過去の同種の調査と比べ食物アレルギー児の割合は幼稚園・保育所ともに増加していた. 保育所に比べ幼稚園では除去食や代替食対応が可能な施設は少なく, 食物アレルギー児の把握も医師の診断以外で行っている施設が多かった. 保育所の中でも, 認可外保育所には同様の傾向がみられた. エピペン®処方児は幼稚園で多かったにもかかわらず, 投与可能な施設は幼稚園のほうが保育所と比較し少なかった. 食物アレルギーに関する知識は, 保育所に比べ幼稚園職員で乏しい傾向があった. 【結語】幼稚園や認可外保育所を中心に, 乳幼児保育施設において, 食物アレルギーに関する知識の啓発と食物アレルギー対応の拡充をより進める必要がある.
  • 立元 千帆, 吉重 道子, 鮫島 幸二, 渡辺 雅子, 木村 絢子, 赤司 賢一, 勝沼 俊雄
    2016 年 30 巻 2 号 p. 164-169
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/29
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    小児気管支喘息発作は従来『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン』 (以下, JPGL) に示される発作強度分類 (小発作, 中発作, 大発作) を用いて評価されてきた. 今回, われわれは修正Pulmonary Indexスコア (MPIS) を用いて喘息発作強度を判定し, 従来の評価方法と比較した. 94名 (129イベント) の気管支喘息発作を対象とした. JPGL 2012で小発作と判断されたイベントが64件, 中発作と判断されたイベントが55件, 大発作と判断されたイベントが10件であった. それぞれのMPISは小発作が4.5±2.1点 (0-9), 中発作が8.1±2.1点 (4-13), 大発作が13.2±1.9点 (11-16) であった. 3群間の比較でいすれも有意な差を認め, MPISは従来の喘息発作強度を適正に反映していると考えられた. 客観性, 評価者間一致性, 評価者内再現性の高い喘息発作評価法であるMPISの普及により, 喘息発作強度のさらなる適正化が期待される.
  • 松﨑 寛司, 本村 知華子, 赤峰 裕子, 岡部 公樹, 川野 聖明, 若槻 雅敏, 岩田 実穂子, 田場 直彦, 村上 洋子, 本荘 哲, ...
    2016 年 30 巻 2 号 p. 170-177
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/29
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    症例は15歳男児. ラーメン1杯を摂取後に行ったランニング中に顔面の発赤・腫脹, 呼吸困難などのアナフィラキシー症状を認めた. それまで小麦製品摂取による即時型の誘発症状はなく, 小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシー (FDEIA) を疑い誘発試験を実施した. 誘発試験において症状は認めなかったが, 小麦負荷と運動負荷, アスピリン負荷と小麦負荷, アスピリン負荷と小麦負荷と運動負荷のいずれの組み合わせにおいても, 血漿ヒスタミン濃度が誘発試験前値の200%, 190%, 248%と上昇を認めたため, 小麦によるFDEIAと診断した. エピペン®を所持してもらい, 小麦製品摂取後2時間以内の運動制限と解熱鎮痛薬使用中の小麦製品摂取の制限ならびに運動制限について指導した. 血漿ヒスタミン濃度の上昇を診断に用いることで, 誘発症状がないために偽陰性と判断されることの危険を回避しうることは, 臨床上極めて有用である.
  • 目黒 敬章, 下村 真毅, 森下 英明, 瀬戸 嗣郎, 木村 光明
    2016 年 30 巻 2 号 p. 178-183
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/29
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    即時型牛乳アレルギーは, 通常生後2~3か月以降に発症し, 新生児期の発症は極めてまれである. 今回われわれは, 生後初めて摂取した乳児用牛乳調整粉乳 (以下, 普通ミルク) により, 蕁麻疹様皮疹を発症した新生児症例を経験した. 患児は正常分娩にて出生した正出生体重男児であり, 生後6時間で初回の普通ミルク10mlを与えたところ, 40分後に一部膨疹を伴う地図状の紅斑が胸腹部に出現した. 牛乳特異的IgE抗体は陰性であったが, 日齢7に実施した普通ミルクを用いた食物経口負荷試験においても, 20mlを摂取後3時間50分で膨疹を伴う紅斑が胸腹部に出現した. 生後4か月時で再度実施した普通ミルク負荷試験においても, 200ml摂取後30分で膨疹が出現した. 本症例では, 牛乳特異的IgE抗体が初発時は陰性であったが生後4か月で陽性化した. 皮疹の性状や発症時間, 臨床経過を考慮すると, 本症例の症状はIgE依存性の即時型アレルギー反応である可能性が高いと考えられる.
総説
  • 浅野 浩一郎
    2016 年 30 巻 2 号 p. 184-189
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/29
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    皮膚, 上下気道, 腸管など異所性のアレルギー疾患が異時性に発症するアレルギーマーチのなかでも, アトピー性皮膚炎患者が遅れて喘息を発症することは古くより知られている現象である. これらの患者の一部に皮膚バリア関連分子であるフィラグリンの遺伝子変異との関連が見出されたことにより, アトピー性皮膚炎合併喘息の発症に経皮アレルゲン感作がかかわっていることが明らかとなった. フィラグリンや細胞間脂質などからなる角質バリアと顆粒層の表皮細胞間のタイトジャンクションで形成される皮膚バリアは, 体内からの水分蒸散を防ぐとともに体外からのアレルゲン等の異物の侵入を防いでいるが, 遺伝子変異以外にもさまざまな機械的・化学的・生物学的要因によって傷害される. さらに, 傷害された皮膚から抗原が侵入する際にはTSLPやIL-23/Th17免疫応答など特異な反応が生じて, Th2型応答をさらに増幅する. 一方で, 傷害を受けていない皮膚に微量の抗原を負荷することで制御性T細胞を誘導し, アレルギーマーチを抑制しうる可能性も示されている. 経皮感作の機序とそれに付随して生じる免疫病態を明らかにすることで, 小児発症アトピー型喘息の新しい予防・治療法の開発に繋がる可能性が期待される.
臨床研究の進め方
  • 佐藤 泰憲, 長島 健悟, 高橋 翔
    2016 年 30 巻 2 号 p. 190-197
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/29
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    臨床研究を開始する際に, 研究者がまず悩む問題の一つは「被験者の数はどれくらい必要か?」ということではないだろうか. 被験者の数が多いほど解析の精度があがり, 統計学的有意差を検出しやすくなる. しかしながら, 統計学的に検出したわずかな差が, 臨床医学的 (あるいは生物学的) に意味のある差とは限らない. そのため, 臨床研究を計画する際には, 科学性・倫理性の双方の観点から, 適切な症例数設計を行う必要がある. 本稿では, 検証的臨床試験における統計学的な症例数設計の原理や手法について概説する.
倫理解説
  • 薄井 紀子
    2016 年 30 巻 2 号 p. 198-205
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/29
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    臨床研究の目的は, 疾病の発症機序・原因・病態の解明や治療・予防の改善につながる種々の知識・知見を習得し一般化させて, 医学・医療を進歩させることである. 研究者は, 研究参加者の人権保護および福利の配慮を最優先事項とし, 倫理的で意義ある臨床研究を遂行しなければならない. 過去に施行された非倫理的臨床研究の反省から策定された, ニュルンベルグ綱領, ヘルシンキ宣言, ベルモントレポートなどで提示された倫理的事項を踏まえ, 米国を中心に臨床研究の7つの倫理原則が打ち出された. すなわち, 臨床研究は, ①社会的および臨床的意義がある, ②科学的妥当性がある, ③適正な被験者選択をする, ④適正なリスク・ベネフィットバランスをもつ, ⑤独立した第三者による審査を受ける, ⑥インフォームド・コンセントを得る, ⑦研究参加者を尊重する, という7つの倫理要件を満たす必要があるとするものである. 国内の臨床研究の新しい倫理指針「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」では, 研究の基本方針のなかでこの7原則と同様の要件が示されている. これら倫理指針を遵守した臨床研究について検討する.
知っておきたい最新のアレルギー・免疫学用語
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