2017 年 31 巻 1 号 p. 28-32
小児科の日常診療においてウイルス感染による小児気管支喘息発作の増悪をしばしば経験し, これまでにrespiratory syncytial virus (RSV) やライノウイルスによる喘息発作の増悪に関する報告は多数みられる.
筆者らは, 2009年に流行した新型インフルエンザウイルス (A (H1N1) pdm09) 感染小児気管支喘息患児において重篤な喘息発作, 肺炎, 無気肺などの呼吸器合併症による入院症例が増加する事象を経験した. したがって, 小児気管支喘息はA (H1N1) pdm09感染による重症化の危険因子である可能性が示唆された. また, これらの入院症例は長期管理されていないことが多かったため, 重症度を確認し, 適切な長期管理が重要であることを再認識した.
筆者らが経験した臨床像とモデルマウスを用いた研究結果から, A (H1N1) pdm09感染では小児気管支喘息患児の肺において高い炎症性サイトカインの産生およびウイルス増殖により強い組織傷害が惹起されている可能性が示唆された.