2020 年 34 巻 3 号 p. 346-350
非IgE依存性食物蛋白誘発胃腸症で比較的急性の症状を呈する病型は食物蛋白誘発胃腸炎に分類され,人工乳による例がほとんどで固形食品が原因抗原となる例は少ない.なかでも魚類による報告は本邦ではまれである.症例1は7歳男児.2歳頃からカジキを摂取するたびに嘔吐した.各魚類の特異的IgE抗体陰性,カジキのリンパ球刺激試験陽性,7歳でのカジキの食物経口負荷試験陽性であった.症例2は2歳女児.離乳期にサケ,カレイ,サワラの摂取後に嘔吐を反復した.各魚類の特異的IgE抗体陰性,マグロ,カレイ,サワラ,サケのリンパ球刺激試験陽性であった.2症例とも症状に再現性があり,病歴から診断された.食物経口負荷試験やリンパ球刺激試験も診断の参考となった.固形食品,特に魚類による報告例はまれであり,症状も非特異的なため診断が遅れやすい.病型によっては慢性化することもあり早期診断が重要である.そのために魚類をはじめ固形食品も本疾患の原因抗原になることを認識し,反復する消化器症状の鑑別疾患の一つとして考慮すべきである.