日本小児アレルギー学会誌
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シンポジウム 1:疫学データーからアレルギーマーチを考える
全国アレルギー疾患疫学調査からみえたアレルギーマーチの「いま」
加藤 泰輔伊藤 靖典足立 雄一
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2024 年 38 巻 1 号 p. 51-57

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抄録

アレルギー素因を有する個体が,原因抗原と発症臓器を異にしながら,複数のアレルギー疾患を発症していく現象をアレルギーマーチと言う.乳児期のアトピー性皮膚炎(AD)がその起点であるとされる一方,アレルギーマーチの経過をたどる小児は少なく,個々の異なるクラスターを反映した集団レベルの有病率パターンを観察しているに過ぎないとの報告もある.我々が行った全国アレルギー疾患医療拠点病院の職員とその家族を対象としたアレルギー疾患有病率調査では,アレルギー疾患の有病率は1歳まではAD,その後加齢とともに食物アレルギー,気管支喘息,アレルギー性鼻炎の順に高くなっており,この発症年齢やピーク年齢の推移はアレルギーマーチを呈していると考えられた.しかしながら,各アレルギー疾患をすべて合併する典型的なアレルギーマーチの経過をたどる小児は3.0%であり,アレルギー疾患の発症やその進展にはAD以外に様々な因子が関与していることが示唆された.

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© 2024 日本小児アレルギー学会
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