2025 年 39 巻 1 号 p. 62-66
食物アレルゲンのほとんどは食物に含まれるタンパク質で,複雑な高分子構造中に複数のIgE結合エピトープを有する.一方,単純な構造をとる低分子物質にはIgE分子が結合しにくいため,アレルゲン性が低いと考えられている.しかし,稀ながらアレルゲンとなり,糖アルコールであるエリスリトールや多糖類であるペクチンを含む食品の経口摂取によるアレルギー症状の報告がある.これら低分子物質の非タンパク質アレルゲンは食品成分の一部,あるいは添加物として用いられ,原材料表示などがないことも多く,ある食品でアレルギー症状を起こしたとしても原因として同定されにくい.多くが測定システムの中での固相化が難しい物質であることより特異的IgEの検出は困難であるが,皮膚テストや好塩基球活性化試験が有用である可能性はある.本稿では,非タンパク質アレルゲン,特にエリスリトール,ペクチンを中心に概説し,非タンパク質アレルゲンが原因となるアレルギー診断の一助としていただく方策を説明したい.