2025 年 39 巻 2 号 p. 155-160
現代では患者に最善の医療を提供するためには,「エビデンス」に基づく診療が望ましいと考えられている.これらのエビデンスを形作る基となる臨床研究は,手法によって介入研究と観察研究,さらにそれらの結果を統合する系統的レビューの3つに分類される.エビデンスレベルは研究手法によって決定され,高ければ高いほど,その結果の信頼度も高くなるとされている.しかし,たとえエビデンスレベルが高い臨床研究であったとしても研究手法そのものに問題があれば,本来解明すべき真実を映し出す結果になっているとは言い難い.このため私たちはエビデンスの高さだけでなく,その質にも注意を払う必要がある.エビデンスの質はランダム化比較試験ではRisk of Bias 2.0,観察研究ではROBINS-Eなどのツールを用いて評価される.医学研究者は質の高い臨床研究を実施して,結果を医学論文として発表することを求められる一方,エビデンスを診療に活用する医療従事者には,論文を読む際にエビデンスのレベルと質の両面を考慮して慎重に解釈することが求められる.