2025 年 39 巻 2 号 p. 161-164
ビタミンDは紫外線曝露によって体内で生成され,また食事から摂取される.近年,ビタミンDは,免疫調節機能を介してアレルギー疾患に関与することが注目されている.特にT細胞や樹状細胞などの免疫細胞に作用し,免疫寛容を促進することで過剰なアレルギー反応を抑制する役割があるとされている.これまで多くの疫学研究により,ビタミンD欠乏が食物アレルギーのリスク因子であることが示唆されている.CHIBA studyでは,母乳栄養児の血中ビタミンD濃度が低く,卵白感作率が高いことが確認された.しかし,諸外国で行われているビタミンDによる介入研究ではまだ予防効果については結論がでていない.日本ではビタミンD欠乏が深刻であり,独自の生活習慣や栄養背景を踏まえた介入が必要である.そこで我々は食物アレルギーの予防を目的としてビタミンDを用いたランダム化比較試験(Vitamin D mediated Prevention of Allergic march in Chiba(D-PAC)study)を行い,高い予防効果を上げることができている.今後は最適な投与時期や至適濃度の検討を通じて,ビタミンD補充の有効性を高める臨床応用が期待される.