日本小児アレルギー学会誌
Online ISSN : 1882-2738
Print ISSN : 0914-2649
ISSN-L : 0914-2649
ステロイド皮膚外用剤を中止後に成長抑制をきたした重症アトピー性皮膚炎の一例
勝沼 俊雄海老澤 元宏椿 俊和坂口 直也木村 光一松原 和樹飯倉 洋治
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 10 巻 2 号 p. 85-88

詳細
抄録
ステロイド皮膚外用剤を一切使用されることのなかった約1年間に, 明かな成長障害が認められた重症アトピー性皮膚炎 (AD) 症例を経験した. 症例は9歳男児. 7歳よりADの悪化が認められ, 抗アレルギー剤, ステロイド軟膏などによる治療を受けていたが, 患児の母親がマスコミの報道などでステロイド剤に対する不信感を強く抱いたため, ステロイド軟膏の使用を完全に中止した. しかしその後も皮膚症状の改善はみられず, 成長の著しい鈍化が認められた. 当科初診後, 入院中に行った検査では, 明かなGH分泌不全を呈していた. 両親に十分説明後, ステロイド軟膏を併用した総合的治療を行ったが, その後はADの改善と同時に成長の catch up が認められた. 本症例の成長抑制, GH分泌不全はステロイド外用剤の経皮吸収による抑制効果とは考え難く, AD自体もしくはADから派生する不眠や掻痒感などのストレスによって生じた可能性が高いと考えられた. ADが社会的関心事となっている今日, いたずらにステロイド剤の有害性のみを強調することには問題も多いといえる.
著者関連情報
© 日本小児アレルギー学会
前の記事 次の記事
feedback
Top