日本小児アレルギー学会誌
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10 巻, 2 号
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  • 是松 聖悟, 小川 昭之
    1996 年10 巻2 号 p. 53-59
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    重症気管支喘息9歳男児の大発作時における心電図R-R間隔,収縮期血圧, および拡張期血圧を測定し, その揺らぎに自己回帰・要素波解析を施し, 次の結果を得た.
    発作当日は, (1)R-R間隔パワースペクトルの低周波帯域パワーが低下し, 高周波帯域パワーが増加した. (2)収縮期血圧パワースペクトルの低周波帯域パワーは著増した.
    以上の結果から, 喘息大発作時には, 交感神経β機能の減弱, 副交感神経機能と交感神経α機能の亢進が示唆された. また, これら異常所見は発作の改善とともに回復し, 3日目には発作間欠期とほぼ同様程度の値に戻った.
  • 岸本 眞知子, 長間 つくみ, 當間 孝子, 宮城 一郎
    1996 年10 巻2 号 p. 60-66
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    沖繩県浦添市近郊に居住する気管支喘息児家屋5世帯と健常者5世帯の家屋内で室内塵中のダニ相とダニ数について一年間調査を行った. 室内細塵1gあたりのダニ数は喘息児家屋は2,038~61,200匹/g, 健常者宅は2,125~81,000匹/gで4月, 5月に増加した. ヤケヒョウヒダニ (Dp) が72.8~96.1%を占め, コナヒョウヒダニ (Df) は0.6%以下とわずかであった. 喘息児家屋と健常者家屋でのダニ数の季節的変化に有意差はなかった. ダニ数が多くなる夏場は発作頻度も増加したが, ダニ数が少ない10月~1月の間も発作は多発していてダニ数と発作頻度との間には明確な相関はなかった.
  • 在津 正文, 佐藤 理香, 室 英理子, 小林 育子, 市丸 智浩, 濱崎 雄平, 宮崎 澄雄, 谷口 良雄, 十時 忠秀
    1996 年10 巻2 号 p. 67-72
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    イソフルレン吸入を施行した気管支喘息重積発作の15歳女児を経験した. 患者は通年型, 重症で前医にしばしば入院していた. 今回も発作のため同医を受診し, ステロイド剤静注, キサンチン製剤, β交感神経刺激剤の投与をされたが発作は憎悪し, 当院へ重積状態で紹介された. 意識レベルの低下, 高CO2血症を認め, 気管内挿管し, 人工呼吸を開始した. しかし気道内圧は高く, 換気は困難であった. 前記製剤に加え, 気道拡張作用をもつ麻酔薬イソフルレンの吸入を開始し, HFJVおよびPSVを併用し, 後遺症なく救命することができた. 本邦での小児気管支喘息重積発作に対するイソフルレンの使用報告は散見されるが, PSVとの併用の報告は少なく, HFJVとの併用の報告は見あたらない. これらの併用は気道内圧を低下させるのに効果的であり, 有効な治療法と考えられる.
    また, ロイコトリエンなどの化学伝達物質が気管支喘息患者で上昇しているという報告がある. 本症例の重積発作時の気管内洗浄液中のLTB4, LTC4は発作改善時に比し高値であった. これらの化学伝達物質が喘息重積発作の局所の病態へ関与している直接の証拠と考えられた.
  • 過去2年間の統計から
    松下 詠治
    1996 年10 巻2 号 p. 73-77
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    過去2年間の林間学校に参加中, 気管支喘息発作が発症した患児81人を検討した. 喘息発作の全受診者に対する割合は24.3%で, 好発季節は秋と春であった. 喘息発作の発症から受診までの時間が長く, 10時間以上もかかった患児が32人 (40%) もいた. 入院治療を要した患児は6人で, 大発作が5人, その内基礎疾患のある1人が死亡した. 林間学校では喘息発作を予防するために十分な予防処置を行い, 発作が発症した時は早期に医療機関を受診すること, 紹介状を持参することが必要と考えられた.
  • 五藤 和子, 栗原 和幸, 池部 敏市, 高増 哲也, 豊島 勝昭
    1996 年10 巻2 号 p. 78-84
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    神奈川県内における小児喘息患者に対する呼吸管理の実態を調査し, 引続き当科での喘息入院患者の変遷を検討した. 県内263病院に過去3年間の小児喘息患者に対する呼吸管理実施状況につきアンケートをとった. 183施設 (回収率70.3%) 中呼吸管理を施行されていた13施設37例に2次アンケートを行い, 施行例の詳細な経過の得られた10例を検討. 非アトピー型の児が半数の5例に, 入院が初回の児が半数であった. 動脈血ガス値を挿管決定の根拠とした例が多かったが, 十分に酸素を投与されていない例もあった. イソプロテレノール持続吸入, 点滴は各1例ずつ. 呼吸器の種類は従圧式が7例. 当科では過去3年間に喘息発作に対する呼吸管理例はなかった. 発作入院数は10年余で約3分の1と減少. 酸素使用率はパルスオキシメーターの導入により1991年以降80%以上. エピネフリン皮下注射施行率は大幅に減少. イソプロテレノール持続吸入施行率は増加傾向. 喘息急性増悪例に対し低酸素状態を的確に把握し, 早期より十分な酸素投与, β刺激剤頻回吸入を行なうことにより呼吸不全はある程度免れるものと思われる.
  • 勝沼 俊雄, 海老澤 元宏, 椿 俊和, 坂口 直也, 木村 光一, 松原 和樹, 飯倉 洋治
    1996 年10 巻2 号 p. 85-88
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ステロイド皮膚外用剤を一切使用されることのなかった約1年間に, 明かな成長障害が認められた重症アトピー性皮膚炎 (AD) 症例を経験した. 症例は9歳男児. 7歳よりADの悪化が認められ, 抗アレルギー剤, ステロイド軟膏などによる治療を受けていたが, 患児の母親がマスコミの報道などでステロイド剤に対する不信感を強く抱いたため, ステロイド軟膏の使用を完全に中止した. しかしその後も皮膚症状の改善はみられず, 成長の著しい鈍化が認められた. 当科初診後, 入院中に行った検査では, 明かなGH分泌不全を呈していた. 両親に十分説明後, ステロイド軟膏を併用した総合的治療を行ったが, その後はADの改善と同時に成長の catch up が認められた. 本症例の成長抑制, GH分泌不全はステロイド外用剤の経皮吸収による抑制効果とは考え難く, AD自体もしくはADから派生する不眠や掻痒感などのストレスによって生じた可能性が高いと考えられた. ADが社会的関心事となっている今日, いたずらにステロイド剤の有害性のみを強調することには問題も多いといえる.
  • 約4年間のフォーローによる検討
    中戸 秀和, 宮川 佐智子, 三河 春樹
    1996 年10 巻2 号 p. 89-95
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    アトピー性皮膚炎乳児に対する乳児期早期からの食事療法が, その後4歳までの皮膚炎の経過やダニ特異IgE抗体獲得にどのように影響するかを retrospective に検討した.
    96例の症例を, 早期より卵を除去したもので食物アレルギーを認めなかったもの (A群), 認めたもの (A'群), 原因食物のみ除去したもの (B群), 原因食物を除去できなかったもの (C群), 食物アレルギーを認めなかったもの (D群) 及びコントロールに分けて検討した.
    皮膚炎の経過はA-D群間, A'-B群間にはともに差を認めなかった. A-D群の方がA'-B群より皮膚炎は軽かった. C群は皮膚炎が有意に強かった. RASTと症状の一致は全体で約39%であった. RASTスコア3以上のものや3種類以上陽性を示す例で食物アレルギーの頻度が高く, ダニ抗体獲得も多種RAST陽性例で有意に多く, その頻度はC群, B群, A'群の順に他群より有意に高かった.
    以上よりアトピー性皮膚炎乳児では皮膚炎の改善やその後のダニ抗体獲得防止に, 食物アレルギーのあるものではその食物除去が重要であり, 多種RAST陽性は危険因子と考えた. 乳児期早期よりの卵除去はある程度有効であると推測した.
  • 東川 昌紀, 加野 草平, 小田嶋 博, 西間 三馨
    1996 年10 巻2 号 p. 96-103
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ステロイド薬の大量吸入による影響を調べる目的で, 施設入院中の気管支喘息児10名に, Beclomethasone dipropionate (BDP) 900μg/日の吸入を2週間行ない, 血清オステオカルシン (OC) を含めた各種パラメーターの変動を検討し以下の結果を得た.
    1. OC, アルカリフォスファターゼ, コルチゾール日内リズム, 末梢血好酸球, 喀痰・鼻汁好酸球, 血清IgEに吸入前後で変化はなかった. 局所副作用は, 口腔内カンジダ培養の陽性化を10例中3例に認めた.
    2. 短期大量BDP療法によりアセチルコリンに対する気道過敏性とMMF, V50, V25の有意な改善を認めた.
    以上より気管支喘息児に対する2週間の短期大量BDP療法は有効で, 重篤な副作用は認めなかった.
  • 日本小児アレルギー学会・喘息死委員会
    1996 年10 巻2 号 p. 104-113
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    1990~1995年10月までに登録された喘息死症例89例について解析した. 年齢は0~26歳 (平均11.5±6.2歳), 男女比は59: 30であった. 喘息重症度は, 軽症: 20例, 中等症: 21例, 重症: 29例, 不明: 19例で, 死亡場所は救急外来を含む病院内死亡は62.9%であった. 死亡に関与した要因は予期せぬ急激な悪化, 適切な受診の遅れが多かった. β-stimulant MDIの過度依存例が全症例中の32.6%と高く, 高年齢で著明であった. 薬物の過剰投与が原因と考えられたのは11例で, すべてβ-stimulant であり, steroid dependent は5例であった.
  • 1996 年10 巻2 号 p. 114-119
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
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