2021 年 7 巻 2 号 p. B_46-B_54
交通事故統計では、縦断勾配が概ね 3%以上を坂路と定義している。本研究では、自転車走行道路が坂路とみなすことができる自転車事故を抽出し、縦断勾配が上りと下りの発生割合を比較した。その結果、ほとんどの事故類型において、自転車は上りと比較して、下りで交通事故に遭遇しやすいことが示された。この傾向は自転車対歩行者事故と自転車単独事故では顕著であった。坂路における子供の事故の特徴として、出会い頭事故や逆走時と推察される事故の割合が高く、交通規則を遵守していない傾向にあることが推察された。一方、高齢者は単独事故や追突、追越追抜時の割合が高く、運転能力が落ちていることが要因にあると推察された。自転車事故の多数を占める出会い頭事故は、自転車が第二当事者の場合、自転車走行道路の縦断勾配をほとんど推定できず、今後の検討が必要である。