抄録
思春期の喘息患者に治癒傾向が認められることは知られているが, そのメカニズムについては不明な点が多い. 今回, これまでの報告を中心に, 小児期の気道過敏性の特性を踏まえて, 思春期の寛解についての考察を行った.
小児の気道過敏性の特徴のひとつとして加齢による影響が報告されているが, 報告の多くは年齢とともに気道過敏性が軽減するというものである. このことから, 思春期における気道過敏性の軽減が, この時期の喘息の治癒傾向に影響を与えることが推測できる. しかしながら思春期においても, 喘息患者では健常児例と比較し気道過敏性は有意に亢進しており, 喘息症状と気道過敏性が解離する傾向にあると思われる.
一方, 長期的な観察から, 乳幼児期のメサコリン吸入試験の程度とその後の喘息の重症度とは関連がみられ, また初回の検査結果と思春期以降に行った2回目の結果の間にも有意な相関性がみられている. さらにメサコリン吸入試験の初回の検査結果と, 思春期以降に行った2回目の個々人の結果の比較では, 寛解の群では気道過敏性は若干の改善傾向がみられるが非寛解群では不変であることから, 気道過敏性は経年的な変化を示す一方, 個々の患者での各年齢におけるメサコリン吸入閾値の程度には大きな変化はみられないことが推測された.
思春期の寛解のメカニズムとして, この時期の気道過敏性の軽減による影響が考えられるが, 思春期には喘息症状と気道過敏性が解離する傾向にあること, また乳幼児期から思春期まで気道過敏性の重症度に普遍性が認められることなどは, 今後とも議論されるべき点と思われる. 思春期の喘息患者における寛解のメカニズムを検討することは喘息の治療を行う上でも重要であるため, この分野でのさらなる研究が期待される.