現在までRSウイルスによる気道感染が気管支喘息を発症さる因子となりうるか, また吸入抗原や食物抗原に対するIgE抗体産生を亢進させるかについて一定の結論を得ていない. 今回我々はこれらを明らかにする目的で, RSウイルスの感染を反復して受けた児を対象として臨床的に検討した.
1. 喘鳴を伴った呼吸障害にて入院となった454症例に鼻汁中RSウイルス抗原を検索し, 166例が陽性となり (36.5%), それらの中で11.4%の19例に反復感染を認めた.
2. 初回RSウイルス感染診断前から3回以上の呼吸困難を伴った呼気性喘鳴のエピソードがあり, このためすでに気管支喘息と診断されている症例が19例中13例であり (喘息群), 初回RSウイルス感染診断時が初めての呼気性喘鳴であった児が19例中6例であった (初回喘鳴群). これらのうち, 喘息群は全例2回目のRSウイルス感染診断後に重症化し, 初回喘鳴群は初回RSウイルス感染診断後に全例, 前記の基準で気管支喘息を発症した.
3. 初回RSウイルス感染診断時 (平均21.5ヶ月), 2回目のRSウイルス感染診断時 (平均31.1ヶ月) であり, その期間は平均9.6ヶ月であった. 初回RSウイルス感染診断時に低酸素を伴う呼吸困難 (SpO
2<90) を呈した児は19例中6例であり, 2回目のRSウイルス感染診断時には19例中4例で, 2回目のRSウイルス感染診断時には必ずしも軽症化しなかった.
4. IgEの産生について: 初回RSウイルス感染診断時に喘息と診断されていた群では, 反復感染後に吸入抗原, 食物抗原が陽性化したのは13例中2例のみで, 一方初回喘鳴群では6例中1例で食物抗原のみが陽性化した.
以上より, RSウイルスの反復感染例でみると, RSウイルスは気管支喘息の発症や重症化に影響を与えると示唆されるが, IgEの産生には影響を与えにくいと推測された.
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