抄録
2歳は腹式呼吸より胸腹式呼吸に変わる節目であり, 気管支喘息・喘息様気管支炎の病態も変化する.
今回, 我々は1986年11月から1989年12月までに気管支喘息・喘息様気管支炎にて入院した2歳未満の乳幼児45人, 58症例 (A群) と2歳以上から4歳未満の幼児62人, 80症例 (B群) の臨床像を比較検討した.
A群の平均年齢は1歳2ヶ月 (男39, 女19) B群の平均年齢は2歳10ヶ月 (男50, 女30) である. 入院時の発作の程度は中発作以上がA群26/58 (44.8%) B群49/80 (61.2%) とA群はB群より軽症であった. 入院日数はA群の平均6.29日, B群の平均5.33日とA群がB群より長かった. (P<0.05) 入院までの有症状日数, 入院時IgE値, 入院時好酸球数には両群に有意差はなかった. 合併症では肺炎・気管支肺炎がA群に35/58 (60.3%) B群に38/80 (47.5%) とA群の合併率が高かった. (P<0.025)
治療ではネオフイリン持続点滴日数に有意差はなかったが, β刺激剤吸入日数はA群の平均5.59日, B群の平均4.60日とA群がB群より長かった. (P<0.05) ステロイド吸入例数はA群16/58 (27.6%) B群6/80 (7.5%) とA群に多かった. (P<0.01) また, イソプロテレノール持続吸入がA群11/58 (19%) B群1/80 (1.2%) とA群に多かった. (P<0.01) ステロイド剤静注治療はA群3例 (ハイドロコーチゾン全量で70mg-270mg) B群4例 (同様に40mg-180mg) に行った.
A群はB群に比べて感染傾向が強く, β刺激剤・イソプロテレノール・ステロイドの吸入治療の必要性が高く, 長期の入院を必要とした.
尚, B群がA群より中発作以上が多かったのは呼吸様式の変化により生じたと考える.