日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
肺動静脈瘻を契機に発見され,脳脊髄動静脈瘻の破裂により死亡した遺伝性出血性末梢血管拡張症の小児2例
三木 康暢田中 敏克亀井 直哉佐藤 有美小川 禎治富永 健太藤田 秀樹城戸 佐知子
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2017 年 33 巻 1 号 p. 76-82

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抄録

肺動静脈瘻(PAVM)は多くが遺伝性出血性末梢血管拡張症(HHT)に合併する.我々はPAVMを契機に発見され,脳脊髄動静脈瘻の破裂により死亡したHHT小児2例を経験した.2例は4歳時に低酸素血症からPAVMと診断された.

症例1: PAVMに対してコイル塞栓を4回行ったが効果は限定的であった.脳動静脈瘻を合併したが経過観察されていた.7歳時より繰り返す鼻出血と皮膚の毛細血管拡張を認め,遺伝子検査でendoglin遺伝子の変異が確認され,HHTと診断した.7歳5か月時に脳動静脈瘻が破裂し死亡した.

症例2: 微小かつびまん性PAVMのためコイル塞栓適応外と判断した.脊髄動静脈瘻を合併したが経過観察されていた.皮膚の毛細血管拡張がありHHTが疑われたが,5歳6か月時に脊髄動静脈瘻が破裂し死亡した.

HHTは全身の血管形成異常を起こし,敗血症が主な死因である.我々小児循環器科医はPAVMに注意が偏る傾向にあるが,死因として脳脊髄動静脈瘻も稀でなく,中枢神経,消化器等を評価し,各科と連携してのフォローが必要である.しかし本症例のように治療不能例や予期せぬ転帰をたどる例もあり,治療に難渋する疾患である.

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© 2017 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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