日本小児循環器学会雑誌
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房室弁の解剖:小児循環器疾患の診断と治療のための基礎知識
鈴木 章司
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ジャーナル オープンアクセス

2017 年 33 巻 2 号 p. 135-139

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抄録

房室弁の解剖知識は,小児循環器疾患の診断や治療の質を高める上で不可欠である.僧帽弁では,弁尖,弁輪,支持組織の構造と機能,また腱索や乳頭筋の変異を理解する.先天性僧帽弁膜症では,弁尖の異型性だけでなく,弁下組織にも異常を伴うことが多い.僧帽弁周囲にある左冠動脈回旋枝,冠状静脈洞,中心線維体,大動脈弁などとの関係も重要である.三尖弁では,弁尖,腱索,乳頭筋の構造,また中隔尖から前尖に多くみられる変異を理解する.三尖弁周囲にある大動脈弁,刺激伝導系(Koch三角)や膜様部中隔との関係も重要である.代表的な房室弁異常を伴う疾患として,房室中隔欠損症とエプスタイン奇形がある.前者では共通房室弁の変異,正常とは異なる刺激伝導系など,後者では高度逆流をきたしうる中隔尖,後尖の変形や付着部の偏位,右室形態の多様性を理解する.単心室型疾患では,体循環を担う三尖弁の耐用性や共通房室弁の逆流が予後に影響する.

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© 2017 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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