日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
心筋シンチグラムで心室前中隔の血流低下を認め微小血管狭心症と判断した16歳女児例
宮本 尚幸渡辺 健伊藤 由依佐々木 宏太佐々木 健一秦 大資
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2017 年 33 巻 3 号 p. 259-264

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抄録

微小血管狭心症は,表在冠動脈に器質的狭窄や攣縮を伴うことなく,微小冠動脈の循環障害に起因する狭心症と定義される.中高年,とくに閉経後の女性に好発する疾患であるが,今回16歳という若年で本疾患を発症したと考えられる一例を経験したので報告する.症例は,16歳女児で,労作時の胸痛と心電図で軽度のST低下を指摘されて当院に紹介となった.身体所見,血液検査では特記すべき異常は認めなかった.運動負荷により硝酸薬抵抗性の狭心痛が出現し,201TI心筋シンチグラフィで心室前中隔の虚血を認めた.冠動脈造影では狭窄および攣縮は認めなかったが,エルゴノビン負荷で前下行枝(LAD)に血流速度の低下を認めた.上記結果から微小血管狭心症と判断した.β遮断薬とCa拮抗薬の併用で治療を開始し,胸痛頻度の低下と心筋シンチグラフィで虚血所見の改善傾向を認めている.近年,本疾患の予後は必ずしも良好でない可能性が示唆されている.非常に稀ではあるが胸痛を訴える若年者の中に本例のような病態の可能性があることを念頭におき,適切に治療することは重要であると考える.

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© 2017 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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