2018 年 34 巻 1 号 p. 22-29
背景:日本人小児PAH患者に対するボセンタン(BOS)新規小児用製剤の有効性,薬物動態,安全性,及び忍容性を検討する目的で治験を実施した.
方法:本研究は非盲検,単群,多施設共同,第3相試験として実施した.投与対象は15歳未満のPAH患者とし,BOS新規小児用製剤を2 mg/kg,1日2回(4 mg/kg/日)投与した.治験期間は12週までの有効性評価期間,その後の継続期間及び製造販売後臨床試験期間の2プロトコルで実施した.主要評価項目はベースライン値から12週後の右心カテーテル検査で肺血管抵抗係数(PVRI)の変化とし,副次評価項目は,投薬終了まで12週毎のWHO機能分類(WHO-FC)の変化等とした.さらに,薬物動態として血中濃度,曝露量,最高濃度到達時間を評価し,安全性及び忍容性では有害事象,投与中止に至った有害事象等を評価した.
結果:患者数は6例,中央値5.5歳(1~13歳),男:女は4 : 2であった.投与後のPVRIは平均4.0±258.6 dyn·sec·m2/cm5低下したが統計学的な有意差は認めなかった.WHO-FCは,全例IIで不変であり,BOSの血漿中薬物濃度の幾何平均値は,最高血漿中濃度が494 ng/mL,1投与間隔の薬物血漿中濃度–時間曲線下面積が2300 ng·h/mLであった.安全性及び忍容性は良好であった.
結論:日本人小児PAH患者に対するBOS新規小児用製剤の安全性と忍容性が確認された.有効性評価項目である平均PVRI及びWHO-FCの悪化はなかった.