日本小児循環器学会雑誌
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心臓と心筋細胞の初期発生研究
石田 秀和 佐波 理恵小垣 滋豊八代 健太
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2019 年 35 巻 2 号 p. 70-81

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抄録

心臓原基は側板中胚葉の前方領域に形成される心臓前駆細胞に由来するとされる.しかし原腸陥入の結果発生する中胚葉細胞において,一体どの細胞がどのタイミングで心臓前駆細胞になるように運命づけられるのか?また,どのようにして心臓を構成する細胞の系譜分け(心室筋,心房筋,刺激伝導系,心内膜細胞,心筋線維芽細胞,平滑筋細胞や内皮細胞)や,位置分け(右心室か左心室か)がなされているのか?このような細胞系譜の運命決定のメカニズムについて,これまでは多くが謎に包まれていた.これらの疑問に答えを出すことは,今後,多能性幹細胞(ES/iPS細胞)などを用いた心臓再生医療やin vitroでの創薬モデルを発展させるためには非常に重要な知見となる.私達はこれまで特に心筋前駆細胞の運命決定にかかわる分子メカニズムについて研究を行ってきた.この総説では,心筋細胞を始めとする心臓構成細胞が,「いつ」「どのようにして」「どの」細胞になるのかという細胞運命を決定する機序の解明に少しでも近づくために私達がこれまで行ってきた研究成果を紹介し,今後の心臓初期発生研究の方向性と臨床応用の可能性に関し議論したい.

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© 2019 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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