日本小児循環器学会雑誌
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35 巻 , 2 号
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巻頭言
Review
  • 石田 秀和, 佐波 理恵, 小垣 滋豊, 八代 健太
    2019 年 35 巻 2 号 p. 70-81
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    心臓原基は側板中胚葉の前方領域に形成される心臓前駆細胞に由来するとされる.しかし原腸陥入の結果発生する中胚葉細胞において,一体どの細胞がどのタイミングで心臓前駆細胞になるように運命づけられるのか?また,どのようにして心臓を構成する細胞の系譜分け(心室筋,心房筋,刺激伝導系,心内膜細胞,心筋線維芽細胞,平滑筋細胞や内皮細胞)や,位置分け(右心室か左心室か)がなされているのか?このような細胞系譜の運命決定のメカニズムについて,これまでは多くが謎に包まれていた.これらの疑問に答えを出すことは,今後,多能性幹細胞(ES/iPS細胞)などを用いた心臓再生医療やin vitroでの創薬モデルを発展させるためには非常に重要な知見となる.私達はこれまで特に心筋前駆細胞の運命決定にかかわる分子メカニズムについて研究を行ってきた.この総説では,心筋細胞を始めとする心臓構成細胞が,「いつ」「どのようにして」「どの」細胞になるのかという細胞運命を決定する機序の解明に少しでも近づくために私達がこれまで行ってきた研究成果を紹介し,今後の心臓初期発生研究の方向性と臨床応用の可能性に関し議論したい.

  • 岩崎 達雄
    2019 年 35 巻 2 号 p. 82-90
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    本稿では小児心臓手術の麻酔管理について概説した.前投薬としてはミダゾラムが頻用されているが,その投与量には病態に応じた十分な配慮が必要である.循環を良好に維持するにはできる限り循環抑制のない麻酔薬であるオピオイドを中心とした麻酔管理を行うとともに心仕事を増加させないように管理する.そのためには,先天性心疾患の特徴である短絡血流がある場合は,肺・体血管抵抗を操作し体・肺循環のバランスをとることが重要であるが,体血管抵抗の調整がより効果的である.小児の肺胞は特に麻酔時に虚脱を起こしやすく軽度の呼気終末陽圧の附加,肺胞リクルートメントがその治療・予防に有効である.成人で肺保護に有効であるとされる低一回換気量の小児の肺への効果は定かでない.近赤外線脳酸素モニターは脳酸素需給バランスの破綻の早期発見に有用であるのみならず,循環管理の指標としても重要である.経食道心エコーも手術の評価や循環動態の把握に非常に有用であるが,非侵襲的であることに留意する.

  • 岸本 英文
    2019 年 35 巻 2 号 p. 91-98
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    左心低形成症候群(HLHS)に対する体外循環下の第一期寛解手術は,1981年にNorwoodらが成功例を報告して以来,体動脈から肺動脈へ人工血管で短絡路(BT shunt)を作成する方法が行われてきたが,本邦における手術成績は不良であった.当時,新生児,乳児期早期に体外循環下に総肺静脈還流異常の修復を行ったright isomerismの症例において,肺動脈閉鎖でBT shuntを行った症例では術後血行動態が安定せず管理に難渋することが多かったのに対し,肺動脈狭窄または肺動脈絞扼術後の症例では術後経過が安定していて救命例が多かった.その理由の1つは,BT shuntでは体血圧の拡張期圧の低下により冠血流量が低下すること,肺血管抵抗の変動によりBT shuntの流量が変化して血行動態が不安定になることにあると考えた.そこで,われわれは右室から肺動脈へ心外導管を用いて肺血流の確保を行うNorwood手術(RV-PA Norwood)を,連続する7例のHLHSに行い全例手術生存し,術後経過が安定したものであったことを報告した.以後RV-PA Norwood法がHLHSに対する第一期寛解手術の1つの選択肢として広く行われるようになり,両方向性Glenn手術の追加を早期に行うことで本症に対する救命率が飛躍的に向上することとなった.

  • 澤田 博文
    2019 年 35 巻 2 号 p. 99-111
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    小児肺高血圧(PH)が,特発性・遺伝性以外に,心疾患,呼吸疾患,肝門脈疾患や全身疾患など多彩な病態を基礎として発症することは成人と同様であるが,小児の特徴として,肺の発生・発達・成長の影響を大きく受けることは重要である.気管支肺異形成(BPD)や先天性横隔膜ヘルニア(CDH)など,周産期の適応障害や肺の発達成長障害の重要性が強調された小児PHの臨床分類も考案されている.PHの血管病変形成に関する研究は,肺動脈性肺高血圧に見られる血管病変,血管機能変化や遺伝子異常を中心に進められ,実験動物では,モノクロタリン投与ラット,慢性低酸素暴露,SU5416+慢性低酸素暴露やBMPR2などの遺伝子改変モデルが用いられている.肺発達成長障害に関しては,高濃度酸素投与,人工呼吸器による圧伸展,出生前の炎症などのBPDモデル,nitorofen投与,胎児手術でのCDH作成,横隔膜欠損をきたす遺伝子改変などのCDHモデルからも,新たな知見が得られている.

原著
  • 芳村 直樹, 山岸 正明, 鈴木 孝明, 市川 肇, 安河内 聰, 坂本 喜三郎
    2019 年 35 巻 2 号 p. 61-69
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    背景:日本小児循環器学会では外科系教育部会を設置し,次世代小児心臓外科医育成プロジェクトを立ち上げることとなった.

    方法:今回,プロジェクトの一環として我が国の小児心臓外科医の労働環境,修練状況等に関する情報を得るために,日本小児循環器学会の外科系会員を対象にアンケート調査を行った.2018年6月26日(火)~8月6日(火)の期間に,日本小児循環器学会正会員の心臓血管外科医師420名に対し匿名式によるWEBアンケートを依頼し,176名から回答が得られた(回答率42%).

    結果:小児心臓外科医の15%が月10回以上の当直を行っており,実に85%が法定労働時間の上限を超えていた.また,今回のアンケート結果から,小児心臓外科医の修練環境は「施設によって大きなばらつきがある」ということが確認された.外科医ひとりあたりの手術症例数にもばらつきが生じてしまい,十分な数の執刀経験が得られているとは言いがたく,過酷な労働環境も相まって,多くの外科医が不満と不安を抱えているのが現状であった.

    結語:「執刀症例の数や難易度等ある程度プログラム化された修練環境」,「出身大学や所属する医局に左右されない修練施設の運用」,「過酷な労働環境の改善」が必要であり,「オールジャパンで次世代を育てる」というシステムを構築していく必要がある.

  • 宮崎 あゆみ, 小栗 絢子, 市村 昇悦
    2019 年 35 巻 2 号 p. 112-118
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    背景:幼少期から動脈硬化が進行する家族性高コレステロール血症(FH)に関し,小児生活習慣病予防健診結果から小児の頻度を考察する.

    方法:2006~2015年度の10年間に高岡市健診を受診した小4児14,609名(男7,461名,女7,148名)を対象に,non-HDLコレステロール(non-HDL-C)値の分布から超高値児を抽出し,小児FHの頻度との関連を考察した.

    結果:対象のnon-HDL-Cと肥満度とは弱く相関した(r=0.30)が,散布図上概ね200 mg/dL以上に関連の弱い超高値児が散在し,その多くがFHと推察された.Non-HDL-C 200 mg/dLはほぼ+4SD値,かつガイドライン上の小児FH治療閾値に相当した.10年間でnon-HDL-C 130 mg/dL以上の高値児割合は減少したが,超高値児割合には有意な変化なく,全体での0.38%は小児の要治療FH頻度に近似する値と考えられた.

    結論:Non-HDL-C測定は小児要治療FH抽出に有用である可能性が示唆され,その頻度は日本成人FHの推定頻度とも矛盾しない.

  • 浅田 大, 富田 英, 藤井 隆成, 樽井 俊, 宮原 義典, 石野 幸三
    2019 年 35 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    背景:膜様部心室中隔欠損(PMVSD)に対する経皮的カテーテル閉鎖術の報告が増加しているが,現在日本における治療方法は外科手術のみである.

    方法: 2007年9月~2016年8月に当科で診療を行ったVSD患者の年齢,体重,検査データを後方視的に検討し,Amplatzer duct occluder I (ADO I)による経皮的閉鎖術の適応基準を満たす症例を抽出した.適応基準は,過去の報告を参照し,安全に閉鎖できると考えられる基準を設定した.

    結果:計359名のVSD患者のうち,自然閉鎖を102名に認め,121名に外科手術による閉鎖を行い,現在も閉鎖していない136名の経過観察を続けていた.経過観察を続けている136名のうちPMVSDを101名に認め,ADOIによる閉鎖基準を21名が満たしていた.

    結論:経過観察されている症例の中にも経皮的閉鎖の適応を満たす患者は一定の割合で存在すると考えられ,低侵襲治療である経皮的閉鎖術が本邦へ導入されれば,多くの患者が恩恵を受ける可能性がある.

症例報告
  • 石川 伸行, 堀米 仁志, 村上 卓, 高橋 実穂, 野崎 良寛, 林 立申, 塩野 淳子, 平松 祐司, 柳沢 裕美
    2019 年 35 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    Noonan症候群はRAS/MAPK経路の遺伝子異常が原因となって発症する常染色体優性遺伝疾患で,臨床的には特徴的顔貌,低身長,先天性心疾患などを呈する.合併する心疾患としては肺動脈弁狭窄,心房中隔欠損症,肥大型心筋症がよく知られているが,稀な合併症として冠動脈拡張が報告されている.症例は新生児期に心室中隔欠損症と診断された.大動脈弁無冠尖・右冠尖逸脱に伴う大動脈弁逆流が進行し,4歳で心室中隔欠損症閉鎖術が行われた.11歳の心臓カテーテル検査で左単一冠動脈とその拡張が認められた.表現型からNoonan症候群が疑われ,16歳で行われた遺伝子検査で,SHOC2遺伝子変異が検出された.冠動脈拡張を伴うNoonan症候群は過去14例報告されているが,同変異を有するNoonan症候群で冠動脈拡張を合併した症例の報告は過去にない.冠動脈拡張を伴うNoonan症候群の報告例をまとめ,その臨床像について考察した.

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