日本小児循環器学会雑誌
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胎児心不全:不整脈の重症度をどう評価する
前野 泰樹
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2019 年 35 巻 4 号 p. 221-227

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抄録

胎児不整脈では,心不全が進行すると胎児水腫となり胎内死亡をきたすため,心不全の重症度評価は重要な課題となるが,実際には正確な評価は難しい.通常,胎児心エコー検査で胎児心不全を評価するCVP (cardiovascular profiling)スコアなどで使用されるドプラ血流波形は,不整脈により変化するため評価に使用できない項目が多い.そこで,心拡大の程度や房室弁閉鎖不全の出現,特に僧帽弁閉鎖不全に着目したり,血流波形のVTI (velocity-time integral)による心拍出量の算出で心不全の兆候を検出する.胎児の一般的な全身状態の評価であるBPS (biophysical profiling score)も参考にできる.心拍数との関連では,頻脈性不整脈では,上室頻拍では心拍220回/分以上,心室頻拍では200回/分以上,胎児徐脈性不整脈では心拍55回/分未満が心不全進行の目安となる.しかし,不整脈症例では,頻脈時の頻拍源性心筋症の併発や,徐脈時には心奇形や抗SS-A抗体による心筋炎/心筋症の合併によって心機能が低下してくることが知られており,心拍数のみでは心不全進行の予測は不十分である.複数の指標を合わせて,継時的な経過観察により症例ごとの計測値の変化を評価しながら,管理方法を判断していくことが重要である.

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© 2019 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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