日本小児循環器学会雑誌
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35 巻 , 4 号
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巻頭言
特集
Review
  • 猪飼 秋夫
    2019 年 35 巻 4 号 p. 208-213
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2020/02/13
    ジャーナル フリー

    乳糜胸は,先天性心疾患の外科治療の術後合併症として比較的頻度が高く,特に新生児期の手術,右心バイパス術の手術件数の増加によりその頻度は増加している.乳糜胸は,腸管にて吸収された長鎖脂肪酸がカイロミクロンとして形成され,リンパ管より漏出し胸腔内に貯留して発症する.診断は,胸水の分析により,白血球中のリンパ球80%以上,中性脂肪110 mg/dL以上が含まれることで確定する.その病因は,外科的手技によりリンパ管ないし胸管が損傷された場合,右心バイパス術や無名静脈の閉塞による静脈圧上昇により漏出する場合,さらに先天性に分けられる.治療方法としては,脂肪制限食,MCTミルク,絶食,ソマトスタチン/オクトレオチド投与などでリンパ流量を減少させる保存的治療と,胸膜癒着,胸管結紮そして胸腔腹腔シャントなどの侵襲的治療があり,定まった治療体系は未だ確立されていない.さらに近年,小児領域でもリンパ管に対する直接的な画像診断が可能となり,MRIによるリンパ管造影,カテーテルによるリンパ管塞栓,リンパ静脈吻合,等の治療法も取られるようになってきている.乳糜胸に対する治療は今後さらなる発展の可能性がある分野である.

  • 西垣 恭一
    2019 年 35 巻 4 号 p. 214-220
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2020/02/13
    ジャーナル フリー

    手術部位感染(SSI)はこれを治療するための人的および経済的コストを増加させる.しかしSSIの約半数はエビデンスに基づく戦略により予防できると推定される1, 2).本稿では,SSI予防策についてCDCを中心とした各種のガイドラインを中心に述べ,注意を喚起したい.おもにCDCガイドライン1999年版および2017年版に示される手術室の環境整備,術前の剃毛,消毒法,手洗い法,抗生剤予防投与,術中の注意点,術後創部の管理法などについて述べる.CDCをはじめとする各種ガイドラインに沿ってSSI予防に努め,手術の質を向上させることが求められる.

  • 前野 泰樹
    2019 年 35 巻 4 号 p. 221-227
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2020/02/13
    ジャーナル フリー

    胎児不整脈では,心不全が進行すると胎児水腫となり胎内死亡をきたすため,心不全の重症度評価は重要な課題となるが,実際には正確な評価は難しい.通常,胎児心エコー検査で胎児心不全を評価するCVP (cardiovascular profiling)スコアなどで使用されるドプラ血流波形は,不整脈により変化するため評価に使用できない項目が多い.そこで,心拡大の程度や房室弁閉鎖不全の出現,特に僧帽弁閉鎖不全に着目したり,血流波形のVTI (velocity-time integral)による心拍出量の算出で心不全の兆候を検出する.胎児の一般的な全身状態の評価であるBPS (biophysical profiling score)も参考にできる.心拍数との関連では,頻脈性不整脈では,上室頻拍では心拍220回/分以上,心室頻拍では200回/分以上,胎児徐脈性不整脈では心拍55回/分未満が心不全進行の目安となる.しかし,不整脈症例では,頻脈時の頻拍源性心筋症の併発や,徐脈時には心奇形や抗SS-A抗体による心筋炎/心筋症の合併によって心機能が低下してくることが知られており,心拍数のみでは心不全進行の予測は不十分である.複数の指標を合わせて,継時的な経過観察により症例ごとの計測値の変化を評価しながら,管理方法を判断していくことが重要である.

  • 河津 由紀子
    2019 年 35 巻 4 号 p. 228-237
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2020/02/13
    ジャーナル フリー
    電子付録

    近年では胎児心エコー検査による先天性心疾患(CHD)の診断例が増加している.日本の胎児心エコー検査は,胎児心スクリーニングである「レベル1」と胎児心精査である「レベル2」に分けられ,小児循環器医は主に「レベル2」胎児心エコー検査を担っている.そしてレベル2胎児心エコー検査による診断スキルが上昇した結果,診断ばかりでなく疾患の「重症度の評価」まで求められる時代となった.重症度の評価としては,1. 疾患名での重症度分類と,2. 疾患ごとでの重症度判定,とに分けられる.1については,AllanLDによって胎児CHDを1–10の重症度に分けた分類スケールや,塩野らによる胎児心臓トリアージ表が参考になる.2については,それぞれの疾患群の中で異なる重症度を評価するためのポイントの認識や計測が必要となる.小児循環器学の中でも胎児心臓病学を学び,レベル2胎児心エコー認証医となるにはこのような重症度の評価を理解しておくことが重要である.

  • 加藤 愛章, 坂口 平馬
    2019 年 35 巻 4 号 p. 238-248
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2020/02/13
    ジャーナル フリー

    小児の上室頻拍の臨床像は成人とは異なり,年代に合わせた対応が必要である.乳児期には心不全による症状が主となり,発見が遅れて重症化することがある.学童期以降では動悸が主症状となり,軽症なことが多い.小児においては持続する頻拍では頻拍誘発性心筋症を来すことがあり,成人以上に注意が必要である.小児の上室頻拍では房室回帰性頻拍,房室結節回帰性頻拍で90%を占め,異所性心房頻拍などの他の不整脈は稀である.心電図診断においては,P波を認識し,P波の波形,QRS波との時間関係などを確認する.アデノシン三リン酸投与を併用するとより正確な診断が可能となる.急性期治療において,血行動態が安定していない場合はただちに同期下カルディオバージョンを行う.血行動態が安定していれば,迷走神経刺激,アデノシン三リン酸投与を要し,多くのSVTは停止する.停止しないSVTに対しては他の抗不整脈薬投与が必要となる.本稿では,小児SVTの心電図診断の具体的な方法を概説し,急性期治療の新たな知見を紹介する.

  • 鈴木 博
    2019 年 35 巻 4 号 p. 249-263
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2020/02/13
    ジャーナル フリー

    遺伝性不整脈は,心筋活動電位を形成するイオンチャネルとこれに関連する蛋白などをコードする遺伝子変異によって発症する疾患の総称である.1957年にQT延長症候群が初めて報告され,現在ではカテコラミン誘発多形性心室頻拍,Brugada症候群,QT短縮症候群,早期再分極症候群,進行性心臓伝導障害も遺伝性不整脈とみなされている.若年突然死の主要な原因であるが,早期発見と介入により予防しうる.遺伝子解析の進歩により,原因不明であった失神,突然死に遺伝性不整脈の診断がつき,個々により適した管理,治療が行われるようになってきている.近年,日本循環器学会のガイドラインも改訂された.これも踏まえて本稿では,QT延長症候群,QT短縮症候群,カテコラミン誘発多形性心室頻拍,Brugada症候群について述べる.

原著
  • 福田 あずさ, 荒木 美樹, 平田 裕香, 福島 富美子, 石井 陽一郎, 田中 健佑, 下山 伸哉, 宮本 隆司, 小林 富男
    2019 年 35 巻 4 号 p. 264-270
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2020/02/13
    ジャーナル フリー

    背景:出生前に先天性疾患と診断される機会の増加に伴い,診断後の家族支援の重要性が増加している.群馬県立小児医療センターでは,先天性心疾患と診断された家族の支援を行っており,活動の一つとしてPICUの看護師もパンフレットを用いた出生前訪問を行っている.出生前訪問後のアンケートにより,先天性心疾患と診断された家族が,出生前訪問に求めるニーズを明らかにし,その効果と改善点について検討した.

    方法:先天性心疾患を疑われ群馬県立小児医療センターへ紹介受診となり,児がPICUに入室した母親51名を対象とし調査を行った.

    結果:対象者のうち23人(45.1%)から研究の同意が得られた.PICU看護師の出生前訪問を記憶していた母親は19人(82.6%)で出生前訪問を全員が「必要」と回答した.その理由は「心配・不安の軽減につながる」「PICUの雰囲気を把握できる」が多かった.しかし現在の出生前訪問では家族が求める情報が網羅できていなかった.

    結論:現在の出生前訪問により,家族の不安を軽減する可能性が示唆された.出生前訪問の内容の見直しとパンフレットの改訂を行い,家族の思いに沿った看護を提供する必要がある.

  • 柘植 智史, 面家 健太郎, 寺澤 厚志, 山本 哲也, 後藤 浩子, 桑原 直樹, 岩田 祐輔, 竹内 敬昌, 桑原 尚志
    2019 年 35 巻 4 号 p. 271-276
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2020/02/13
    ジャーナル フリー

    背景:18トリソミー児の先天性心疾患に対しては現時点で明確な治療指針が定まっていない.当施設では,手術介入が在宅移行にあたって不可欠で両親の介入希望がある場合のみ姑息術に限って行う方針としている.

    方法:2010年1月~2016年9月に当科で診察した17例を対象として,姑息術の有無が在宅移行へ与える効果について後方視的に検討した.在宅移行にあたり手術介入を行った例(I群=5例)と行わなかった例(N群=12例)に分類し,2群間で比較した.

    結果:2017年8月末時点で,生存日数の中央値はI群427日,N群255日であった(p=0.1168).院内死亡例はI群1例,N群5例で,在宅期間(=死亡日齢−退院日齢)の中央値はI群647日,N群72日であった(p=0.0495).

    結論:在宅移行に向け姑息術を行うことで生存日数および在宅期間を延長し,児と家族が一緒に過ごせる期間を長くできる可能性がある.

症例報告
  • 矢野 悠介, 村上 卓, 今川 和生, 石川 伸行, 野崎 良寛, 髙橋 実穂, 平松 祐司, 堀米 仁志
    2019 年 35 巻 4 号 p. 279-283
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2020/02/13
    ジャーナル フリー

    22q11.2重複症候群は1999年に初めて報告された疾患で,22q11.2欠失症候群に類似した表現型を呈する.第5大動脈弓遺残の遺伝的背景検索として行った染色体FISH検査で22q11.2重複症候群と診断された乳児例を報告する.症例は男児.胎児エコー検査で発育遅延と心室中隔欠損症が指摘されていた.在胎36週0日,体重1,770 gで出生した.特徴的顔貌を呈し,心エコーで膜様部心室中隔欠損,心房中隔欠損,第5大動脈弓遺残,右鎖骨下動脈起始異常,左上大静脈遺残と診断された.日齢13に動脈管結紮術が行われた.マイクロアレイCGH検査では典型的な3Mbの領域が重複していた.第5大動脈弓遺残は22q11.2欠失症候群では報告があるが,重複症候群に合併した症例は本例が初めてである.22q11.2領域の遺伝子の量的異常が第5大動脈弓遺残発症にも関与している可能性が示唆された.

  • 山形 知慧, 進藤 考洋, 白神 一博, 朝海 廣子, 平田 陽一郎, 犬塚 亮, 金子 明依, 高梨 さやか, 水口 雅, 藤本 嗣人, ...
    2019 年 35 巻 4 号 p. 284-289
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2020/02/13
    ジャーナル フリー

    新生児心筋炎は致死率が50%以上と高く,エンテロウイルスは代表的な原因ウイルスとして知られている.今回我々はエンテロウイルスによる新生児期の急性心筋炎の症例を経験したので報告する.患者は40週1日,2,637 gで出生した.日齢2に発熱が出現し,日齢7に過剰心音を認め,心エコー検査では左室駆出率の低下を認めトロポニンTも陽性であったことから急性心筋炎の診断でカテコラミンによる治療が開始となった.日齢9に人工呼吸器管理が開始となった.経時的に呼吸状態・循環動態の改善認め日齢30に前医へ転院となった.日齢10の血液検体からエンテロウイルスが検出され原因ウイルスと考えられた.本症例においては移行抗体を認めず重症化に寄与した可能性が考えられた.心筋炎に対しては支持療法で治療の選択肢が限られていることから感染の予防に努めることが必要である.

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