日本小児循環器学会雑誌
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先天性心疾患における心肺運動負荷テストの活用
犬塚 亮
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2020 年 36 巻 1 号 p. 16-22

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抄録

運動耐容能低下は慢性心不全の主要症状の一つである.心肺運動負荷テスト(CPX)では,運動中の気道におけるガス交換を計測することで,心血管および換気システムの運動ストレスに対する反応を同時に調べることができる.運動中は,筋肉で消費・産生される酸素・二酸化炭素と,肺における外呼吸が心血管系を通じてカップリングしている.そのため,肺における外呼吸を調べることで,運動中の細胞呼吸の需要増加に対する心臓血管系の適応能力を明らかにすることができる.先天性心疾患(CHD)患者は,幼少期より心疾患とともに育ち,自分の生活スタイルを心疾患に適応させて暮らしているため,運動耐容能の低下があっても気づかないことが多い.そのため,CHD患者では,いわゆる“無症状”な場合でも,CPXにより客観的な評価を行い,潜在的な運動耐容能の低下を早期に検出することが重要である.また,運動耐容能低下の程度およびCPXによって得られるその他の指標は,CHDの患者において強い生命予後予測因子であることが示されている.CHDの患者は,外科手術やカテーテル治療などリスクの高い治療が必要になることがあり,Risk-stratificationの一つの手段として,精度の高い予後予測を行うことのできるCPXの果たす役割は大きい.この総説ではCHDにおけるCPXの結果の解釈および活用の仕方について概説する.

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