背景:本研究の目的は小児期の無症候性大動脈弁閉鎖不全(asymptomatic aortic regurgitation: aAR)に対する至適な外科治療のタイミングについて左室予備能の観点から検討することである.
方法:静岡県立こども病院で外科治療を行った18歳以下のaAR33例を対象に診療録と心エコー画像を用いて後方視的に検討した.
結果:術前の心エコーにおいて左室収縮末期径係数(indexed end-systolic dimension: ESDI)が31 mm/m2未満または左室拡張末期径係数(indexed end-systolic dimension: ESDI)が51 mm/m2未満のaAR患者では,外科治療により各々80%(12/15)および77%(13/17)において術後3年間で左室容積が正常範囲(ESDI <25 mm/m2かつEDDI <40 mm/m2)へ改善した.なお,これらの群では全例が術前の左室駆出率(ejection fraction: EF)≧50 %であった.術後に左室容積やEFの正常化を認めないハザード比は術前ESDI ≧31 mm/m2: 1.60(95%信頼区間0.6–4.3, p=0.3),EDDI ≧51 mm/m2: 1.75(95%信頼区間0.6–5.2, p=0.3),術前EF <50%: 3.37(95%信頼区間0.8–14.6, p=0.1)であった.観察期間中の死亡や大動脈弁に対する再手術は認めなかった.
結論:ESDI ≧31 mm/m2やEDDI ≧51 mm/m2は18歳以下のaARに対する外科的介入時期を決定する上で有用な指標になりうる.
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