日本小児循環器学会雑誌
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36 巻 , 1 号
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巻頭言
Review
  • 片岡 功一
    2020 年 36 巻 1 号 p. 3-15
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/06/11
    ジャーナル フリー

    18トリソミーおよび13トリソミーは頻度の高い常染色体異常症候群であり,重度の精神運動発達遅滞,先天性心疾患など多彩な合併症を呈する.生命予後不良として,従来は積極的な治療が行われてこなかった.近年,積極的な治療により生命予後が改善するとの報告が増加し,5年,10年の長期生存率を報告するpopulation-based studyもみられるようになった.合併する心疾患では,肺血管閉塞性病変が早期に進行する症例があるなどの特徴が徐々に解明されている.心臓血管手術では適切な手術時期や手術法,他臓器合併症など検討すべき課題が多く,長期的な生命予後を改善するかは未だ不明で,施設間で対応の相違がみられる.手術の目的として生存期間の延長のみならず,患児と家族のquality of life (QOL)向上も重要である.蓄積されてきたエビデンスに基づき患者家族に精確な情報を提供し,十分な話し合いを通じて「児の最善の利益」と家族の意思を尊重しつつ,症例ごとに最もよい治療を模索する必要がある.

  • 犬塚 亮
    2020 年 36 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/06/11
    ジャーナル フリー

    運動耐容能低下は慢性心不全の主要症状の一つである.心肺運動負荷テスト(CPX)では,運動中の気道におけるガス交換を計測することで,心血管および換気システムの運動ストレスに対する反応を同時に調べることができる.運動中は,筋肉で消費・産生される酸素・二酸化炭素と,肺における外呼吸が心血管系を通じてカップリングしている.そのため,肺における外呼吸を調べることで,運動中の細胞呼吸の需要増加に対する心臓血管系の適応能力を明らかにすることができる.先天性心疾患(CHD)患者は,幼少期より心疾患とともに育ち,自分の生活スタイルを心疾患に適応させて暮らしているため,運動耐容能の低下があっても気づかないことが多い.そのため,CHD患者では,いわゆる“無症状”な場合でも,CPXにより客観的な評価を行い,潜在的な運動耐容能の低下を早期に検出することが重要である.また,運動耐容能低下の程度およびCPXによって得られるその他の指標は,CHDの患者において強い生命予後予測因子であることが示されている.CHDの患者は,外科手術やカテーテル治療などリスクの高い治療が必要になることがあり,Risk-stratificationの一つの手段として,精度の高い予後予測を行うことのできるCPXの果たす役割は大きい.この総説ではCHDにおけるCPXの結果の解釈および活用の仕方について概説する.

  • 佐地 真育
    2020 年 36 巻 1 号 p. 23-35
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/06/11
    ジャーナル フリー

    経皮的肺動脈弁バルーン拡張術(Balloon pulmonary valvuloplasty: BPV)はテクノロジーと共に進化を遂げ,現在では外科的肺動脈弁拡張術を凌ぐ成績を納め,肺動脈弁狭窄に対する標準治療となった.2000年にフランスのBonhoefferらが右室流出路—肺動脈導管の機能不全に対してpercutaneous pulmonary valve implantation (PPVI)を成功させ,2010年にはMelody valve (Medtronic, Minneapolis, MN)が米国Food and Drug Administration (FDA)の承認を受け,臨床で広く使われるようになった.また成人領域で行われているTranscatheter aortic valve replacement (TAVR)の技術をもとに近年,自己の右室流出路に対するカテーテル治療,そして弁置換後(肺動脈弁位のみならず大動脈弁,僧帽弁,三尖弁位)のValve-in-valveの有効性が示された.本邦の外科手術の成績は優れているが,複数回の開胸歴や併存症のため,手術リスクが高い患者は周術期のイベントを起こす可能性が高いだけでなく,無事手術が終わってもその後,長期入院を要することもある.成人領域と同様,この領域においても小児循環器医,小児心臓外科医,循環器内科医,コメディカルがハートチームを意識し,ACHD患者を総括的に診療する必要がある.本稿ではPPVIの治療適応(肺動脈狭窄と閉鎖不全の両者),手技の詳細,起こりうる合併症等について過去の報告,本邦の臨床経験を踏まえReviewを行う.

  • 門間 和夫
    2020 年 36 巻 1 号 p. 36-45
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/06/11
    ジャーナル フリー

    Bis-diamineは強力なteratogenで,ラットでほぼ前例に胸腺低形成と先天性心疾患を生じ,その一部に横隔膜ヘルニアを合併する.Bis-diamine 200 mgを妊娠9日と10日にラット40匹に胃内注入し,満期21日目の胎仔で全身急速凍結法,凍結ミクロトーム,実体顕微鏡(Wild M400)を用いて0.5 mm毎の胸部横断面を連続写眞で記録した.300胎仔に胸腺低形成(100%),各種先天性心疾患(90%),横隔膜ヘルニア(40%)(左側100例,右側20例)を生じた.左側横隔膜ヘルニアの写真の記録から次の所見が得られた.ヘルニア孔により主に肝臓が左胸郭に入り込み,肺と心臓は圧排されて低形成であった.軽度のヘルニアでは肝臓の左頭側部がわずかに左胸郭背側に入るだけで左肺の低形成は軽度で右肺と心臓の低形成はなかった.中程度ヘルニアでは肝臓が左胸郭中部と後部に入り左肺は半分になり,心臓は正中より右胸郭内に圧排されて小さくなり,右肺も軽度低形成であった.高度なヘルニア例では肝臓と胃が全左胸郭を占め,左肺は肺尖部に痕跡的に存在した.即ち,ヘルニアの程度に応じた肺低形成と心臓低形成が明らかであった.これらのラット胎生期横隔膜ヘルニアの胸郭横断面の天然色写真を提示する.

原著
  • 小野 頼母, 新居 正基, 田邊 雄大, 石垣 瑞彦, 佐藤 慶介, 芳本 潤, 金 成海, 満下 紀恵, 田中 靖彦
    2020 年 36 巻 1 号 p. 46-54
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/06/11
    ジャーナル フリー

    背景:本研究の目的は小児期の無症候性大動脈弁閉鎖不全(asymptomatic aortic regurgitation: aAR)に対する至適な外科治療のタイミングについて左室予備能の観点から検討することである.

    方法:静岡県立こども病院で外科治療を行った18歳以下のaAR33例を対象に診療録と心エコー画像を用いて後方視的に検討した.

    結果:術前の心エコーにおいて左室収縮末期径係数(indexed end-systolic dimension: ESDI)が31 mm/m2未満または左室拡張末期径係数(indexed end-systolic dimension: ESDI)が51 mm/m2未満のaAR患者では,外科治療により各々80%(12/15)および77%(13/17)において術後3年間で左室容積が正常範囲(ESDI <25 mm/m2かつEDDI <40 mm/m2)へ改善した.なお,これらの群では全例が術前の左室駆出率(ejection fraction: EF)≧50 %であった.術後に左室容積やEFの正常化を認めないハザード比は術前ESDI ≧31 mm/m2: 1.60(95%信頼区間0.6–4.3, p=0.3),EDDI ≧51 mm/m2: 1.75(95%信頼区間0.6–5.2, p=0.3),術前EF <50%: 3.37(95%信頼区間0.8–14.6, p=0.1)であった.観察期間中の死亡や大動脈弁に対する再手術は認めなかった.

    結論:ESDI ≧31 mm/m2やEDDI ≧51 mm/m2は18歳以下のaARに対する外科的介入時期を決定する上で有用な指標になりうる.

  • 成田 淳, 小垣 滋豊, 石井 良, 石田 秀和, 上野 高義, 澤 芳樹, 大薗 恵一
    2020 年 36 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/06/11
    ジャーナル フリー

    背景:改正臓器移植法施行後,全国から小児重症心不全患者の相談が増加するのに伴い,ハイリスク患者の病院間搬送も重要な課題となっている.

    方法:2010年7月~2018年12月に重症心不全のため病院間搬送となった42症例を対象とした.患者背景,搬送形態,搬送後補助人工心臓(VAD)装着状況,予後を調査し,病院間搬送に伴う課題を検討した.

    結果:原疾患は,拡張型心筋症25例,拘束型心筋症12例,急性心筋炎5例であり,搬送形態は,陸路26例,空路16例であった.人工呼吸管理22例(52.3%),補助循環装着14例(33.3%)と集中治療継続下の搬送が多く,搬送直後に治療強化を要する例が8例あり,より低年齢の症例で必要となる傾向にあった.最終的に8割以上がVAD装着となり,10例が心臓移植に到達,死亡例は11例であった.

    結語:小児重症心不全患者の病院間搬送には,早期からの情報共有と状況に応じた搬送計画が重要であり,人員の確保と経験を要する特殊な領域である.同時に中枢ルート確保時の留意や家族ケアにも配慮が必要であり,よりよい病院間搬送の体制づくりが望まれる.

症例報告
  • 杉野 充伸, 森田 理沙, 浦山 耕太郎, 岩朝 徹, 田原 昌博
    2020 年 36 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/06/11
    ジャーナル フリー

    肺静脈閉塞症(PVOD)は肺静脈の閉塞性病変から肺高血圧を呈する予後不良の疾患である.症例は動脈管開存を合併した1か月男児.肺高血圧クライシスで入院した.肺体血圧比1.3, 平均肺動脈圧43 mmHg, 肺動脈楔入圧6 mmHg, 肺血管抵抗10.3 unit·m2で,エポプロステノール持続静注を含む多剤併用療法を開始した.動脈管は自然閉鎖したが肺高血圧が持続し,特発性肺動脈性肺高血圧と診断した.当初治療への反応は良好であったが,肺血管拡張薬の増量に伴い肺水腫を繰り返した.1歳0か月から急速に右心不全が進行し1歳2か月で永眠した.剖検肺病理で肺小静脈内膜肥厚による肺静脈閉塞および肺胞毛細管の増生を認め,PVODと判明した.一方高度な肺小動脈病変(Heath–Edwards 4度)も認めた.肺血管拡張薬により繰り返す肺水腫をきたす場合はPVODを鑑別に挙げ,肺移植を含めた治療戦略を考えるべきである.

  • 吉井 公浩, 佐藤 純, 加藤 温子, 吉田 修一朗, 武田 紹, 西川 浩, 大沢 拓哉, 櫻井 寛久, 野中 利通, 櫻井 一, 大橋 ...
    2020 年 36 巻 1 号 p. 72-78
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/06/11
    ジャーナル フリー

    症例は妊娠39週6日,3,052 gで自然経腟分娩にて出生.胎児期に純型肺動脈閉鎖症(PA-IVS)と診断.日齢3に啼泣時の心電図のST変化から右室依存性冠循環(RVDCC)を疑い,心臓カテーテル検査にて,全冠動脈孔閉鎖(ACA)を伴うPA-IVSと診断された.SC血流の経時変化に注視し,パルスドップラー (PW)で評価し,日齢41にBTシャントおよび上行大動脈右心室短絡術(Ao-RVシャント)を施行.出生時のSC血流は収縮期にRV(右室)内から心筋内への順行性血流と,拡張期に心筋内からRV内への逆行性血流波形であったが,術後は収縮期に順行性血流,拡張早期は逆行性血流,新たに拡張末期に順行性血流を認め,2峰性順行性血流となった.加えて,Ao-RVシャントによりSCの酸素飽和度の上昇も冠循環の改善に寄与した.Ao-RVシャントはACAを伴うPA-IVSの新たな治療戦略として有用であった.

  • 満尾 博, 帯刀 英樹, 坂本 一郎, 小野 友行, 塩瀬 明
    2020 年 36 巻 1 号 p. 84-89
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/06/11
    ジャーナル フリー

    フォンタン手術後の外科的再介入としては,TCPC (Total cavopulmonary connection)コンバージョン,ペースメーカー植え込み術,房室弁形成/置換がある.導管狭窄は稀な合併症であるが再導管置換の報告はほとんどない.今回,心外導管型フォンタン手術後遠隔期に導管狭窄をきたし再手術を施行した2症例を経験したので報告する.症例1は20歳男性.三尖弁閉鎖症に対して,3歳時に心外導管型フォンタン手術施行.19歳時に完全房室ブロックとなり,ペースメーカー植え込みが必要となった.精査にて中等度の新大動脈弁閉鎖不全と心外導管狭窄を認めた.再心外導管置換,新大動脈弁置換術,心外膜ペースメーカー留置術を施行した.症例2は20歳男性.肺動脈閉鎖症に対して5歳時に心外導管型フォンタン手術施行した.19歳時に倦怠感と下血・喀血の出現あり.心臓カテーテル検査にて圧較差14 mmHgの導管狭窄を認めた.20歳時に導管置換術施行した.フォンタン手術後の導管狭窄の報告は少ないが,重篤な合併症であり,フォンタン手術後の心臓カテーテル検査にて導管の屈曲等を認める場合には,注意深く経過を観察する必要がある.

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