日本小児循環器学会雑誌
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心臓の成り立ちと前駆細胞
小久保 博樹
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2022 年 38 巻 2 号 p. 75-86

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抄録

心臓は,心筋細胞によって構成される心臓原基の前後軸に沿って流出路–心室–心房の区画化がなされ,その後にその区画化に従った心筋細胞の移動や増殖を経て形成されるというモデルが提唱されてきた.しかし,20年程前に心臓原基の内側に二次心臓領域と呼ばれる心臓前駆細胞の存在が報告されて以来,その考え方を大きく変えてきた.さらに近年,単一細胞のトランスクリプトーム解析によって,中胚葉が形成される時期から,解剖学的に区分された各領域を形成する細胞の運命が順次決定される可能性が示され,さらに変貌を遂げようとしている.つまり,中胚葉が形成されて胚の前方中央へと移動して行く間に細胞の運命が決定され,内外側に沿って性質の異なる予定心臓領域を配した心臓原基が形成される.その一部が形態的変化に伴って前駆細胞のプールとして残存していき,流入路および流出路から心臓へと進入形成する細胞を供給しながら心臓が形成されていく一連の細胞の流れが示されてきた.本稿では,それらの知見を加えた心臓形成モデルの構築を試みる.

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© 2022 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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